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    • 2016/5/22 23:56
    • 乾退助編4/5(OJB協賛)
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    • 「・・・・・・し、失礼します」
      遠慮がちな声の後で、控えめな足音が、すぐ枕元にまで近づいて来た。てっきり襖の辺りから声をかけてくるものだと思っていた俺は、少なからず驚いた。
      (まったく・・・・・・危機感のないお嬢さんだね)
      更にお嬢さんは、俺のすぐ傍らに腰を降ろした。しかしなぜか、一向に声をかけてこない。息を潜め、じっと俺に視線を落としているようだ。
       よもや俺の屹立に気がついて言葉を失っているのかと思ったが、すんでの寝返りによりお嬢さんが座っている位置からは分からないはずだ。
      (どういうつもりなのかねえ?)
      ここで目を覚ますのも無粋と、俺はそのまま、お嬢さんの酔狂に付き合うことにした。

       やがて聞こえてきたのは、およそ起こそうとしている人間のそれとは思えない、小さな囁きだった。
      「乾さん・・・・・・もう、からかわないでくださいね?」
      真剣な声音に、目を閉じたまま耳を傾ける。
      「恥ずかしいものは、恥ずかしいんですよ・・・・・・好き、だから・・・・・・」
      (そう来るのか・・・・・・これは、参ったねえ)
      思いがけない告白に、薄れかけていた欲情が熱を取り戻してしまう。今お嬢さんに触れられたら、きっともう、歯止めは効かない。

       思いを見透かしたのか、お嬢さんは俺の肩に手を触れた。そこで止めればいいものを、あろうことか、肩にかかっていた髪を梳くように撫でてくる。
      「乾さん・・・・・・」
      「・・・・・・なんだい?」
      「きゃっ!!」
      逃げようとする手を素早く掴み、そのまま、俺の方へと引き寄せる。体勢を崩したお嬢さんの身体が、ふわりと俺に降ってくる。
       夜明けの室内に満ちたごく弱い白光が、お嬢さんの着た淡い着物の色を浮かび上がらせている。それは先ほどの空想よりも色鮮やかに美しく、可憐で艶めかしかった。

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