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- 2014/2/27 2:12
- とろける恋の味・その６
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- 「本命チョコです」
「……え？ えぇ！？」
焦って赤面する直枝さん。その姿を見て、少しだけ溜飲が下がりました。
「……冗談ですよ？」
「……な、なんだ、冗談か……」
ホッとしたように受け取る直枝さん。……その反応は看過できませんね。
「……この恨みは能美さんに晴らしてもらいましょうか」
このあと直枝さんは、能美さんからも本命チョコを貰うでしょうから、自分を好いている人がいることをはっきりと自覚してもらいましょう。
「……なんか、物騒なこと言ってない？」
「気のせいですよ」
適当に誤魔化します。どうせすぐにわかることですから。
「では、わたしはこれで失礼します」
「あ、うん。またね、西園さん」
「ええ、また……あ、直枝さん」
一応、釘を刺しておきましょう。
「せっかく作ったので、今日中に召し上がってください」
わたしの言葉に直枝さんは、幾分照れた感じで、会釈だけを残して去っていきました。
「……ふふっ」
思わず笑みがこぼれました。手作りだと示唆しましたが、きっと直枝さんは義理チョコだと思ってあれを開封するのでしょう。……何の心構えもなく、無防備に。
「……次に会うときが楽しみです」
きっと直枝さんは、顔を真っ赤にして硬直してくれるでしょうね。周りに恭介さんたちがいればはやし立てるかもしれません。
「結局、『貰う方も気が楽』なチョコにはなりませんでしたが……」
直枝さんに渡したチョコはハート型。そこにはホワイトチョコでただ一言。
かの文豪が「月が綺麗ですね」と訳したあの英文を。
「鈍感な直枝さんには、少し“重い”くらいが丁度いいでしょうね」
直枝さんがどんな風に解釈するか、すごく楽しみです。
- 「本命チョコです」
