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- 2020/6/18 18:35
- 存在のない子供たち レビュー
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- 存在のない子供たち
★★★★★
監督 ナディーン・ラバキー
出演 ゼイン・アル・ラフィーア、ヨルダノス・シフェラウ、シドラ・イザム
製作国 レバノン、フランス
レバノンの貧民窟で暮らす12歳の少年ゼインは兄弟姉妹の為、家計を支えていた。ある日、家賃を払えない借金の形として妹サハルが嫁がされる事になる。両親に必死に抵抗するゼインだったが力及ぶ訳なく父親に連れ去られるサハル…。そのまま家を飛び出したゼインだったが…。
重いです
重さ故に中東の過酷な格差社会がフィクション以上の現実味を露にした社会派ドラマ…。
世界共通の問題ではありますが元凶の貧困がもたらす人間の所業が善悪の垣根を隔てていく経緯は本作からも容易に伺えてきます。
国の体質や政治の滞りが大きく影響してるのも確か…。
結局、犠牲になるのは非力な子供だったりするわけですね
大筋としては自分を産んだ事で両親を訴えるゼイン少年の回顧録…。
その経緯が、この裁判に繋がっていく物語の構成になっております。
移民問題にも鋭くメスを入れており貧困とまみれるプロットの数々は生々しいです
本作のハイライトの1つ…。
ゼイン少年と赤ん坊の生活でしょうかね…。
これほどハラハラして胸が痛くなる思いは久しくなかった…
氷に砂糖を振り掛けて頬張る2人に泣きそうになりました
ミルクの作り方が分からなくても違法ドリンクの作り方と裁き方は御手の物という生活色も痛ましいですね
赤ん坊と移動し続けるゼイン少年の危なっかしさも見守りたくなりつつ非常に恐くもなってきます。
12歳の少年が出来る事といえば、これが精一杯なのは明らか…。
重責からクールなゼイン少年が大粒の涙を伝わせるシーンは実に印象的です。
戸籍がない子供は中東では珍しくない事で実質存在していないのと変わりなく学校にも通えないという悲惨な境遇…。
社会的地位を築けるわけもないので未来など描ける事も出来ません
ゼイン少年を通してメッセージとして残しておりますが「育てられないなら産むな」…。
子供達が寝てる腋でベッドを揺らしている両親に対しての思いでもあります
一概に両親が悪いとも言えないですが模範的には程遠い存在ですからね
大人顔負けのゼイン少年の主張が切実なだけに的を得ており一点の曇りもありません。
何一つ表情を変えなかったゼイン少年のラストカット…。本来なら子供は、こうあるものだとつくづく感じさせられました。
女性監督らしい繊細な描写も素晴らしく…。
改めて考えさせられる題材ながら軽視出来ない傑作です。
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