イクシートさんとモバ友になろう!
日記・サークル・友達・楽しみいっぱい!
-
- 2013/3/28 23:57
- 擬態と世界
-
- コメント(0)
- 閲覧(13)
-
-
- 「帰ったよ」
色味の薄いくすんだ金の髪を風になびかせ、この城の主・イクシートはエントランスに降り立った。背中から広がる大きな羽は光を帯びて収縮し、やがて背中の刻印に収まって消えた。
「あら、やっと帰って来たのね…」
それを目で追って迎えたのは、桃色のふわふわした衣装に包まれた女性。そんな恰好をしているにも関わらず可愛らしいと思えないのは、すらりとした体型と、氷のような感情の籠っていない眼差しだからだろうか。
「…。あぁ、レイアか。何だか姿が変わっているようだけど?」
「種族を変更したわ…。『ドミニオン』というそうよ」
イクシートは聞いておきながら興味なさそうにその横を通り過ぎる。従者の方も気に留めることなくその後ろを歩き出す。翼を模したプリズムの破片が、光を弾いて色とりどりに変化した。
「ふーん。あぁ、また名前決められるようだね。変える?」
「仰せのままにすればいいわ…」
イクシートは少し立ち止まり、
「そうだな…、オルヴァ…Orvaは?」
「…それ、種族名…」
オルヴァと呼ばれた下僕は表情を変えずに答えて、
「いいじゃないか、もう1段階制限解除したら、また別のにするんだろう?」
「不可解ね…。いいわ、了解」
「調査はどう…?」
帰って来た時何もなかった椅子の周りに、紙と本がうすら高く積まれている。
「データを送った通りだけど、侵蝕中は魔力が低下するようだね。しかも何故か雄、悪魔だけだ」
「グルム?」
「逆だ。悪魔はその時間帯は城などに籠ってやり過ごすようだ。反対に魔物…雌は魔力が活性化される。至る所で乱闘を見たよ。でも、鎬の削り合いのような感じ…かな」
イクシートは冊子のページをめくりながら言った。
「現魔王が立ってからまだ歴史は浅いが、転生悪魔を造りだしそれをシステムに組み込むなんてね。本当に興味深い」
「あの世界でも使いたかった?」
「いや、それは無理じゃないかな…なんせ突発事象だし。じゃなければ『彼』があれほど研究に没頭することも…なかっただろう」
「後悔はないのね、マスター」
オルヴァはぽつりと訊いた。
「さぁね?それよりも気になるのは転生悪魔だ。実際調べてみないと魔力供給の関係、侵蝕の影響がどれほどなのか分からないから」
イクシートは全く意に介さず、面白そうに手元の資料に目を通していた。
「サンプル…探してくる?」
「そうだな、手ごろなのがいれば…」
その目が妖しげに、光った。
- 「帰ったよ」