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- 2017/3/2 13:49
- 小説「ふたりでひとつ」ハートの7
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- 新学期が始まって一週間が経って、コスモスのピンク色や黄色が似合う景色が始まった。
放課後、琴葉ちゃんと待ち合わせをして、ふたりで帰る夕焼けは、異様に輝いていた。
「…で、琴葉ちゃん、話って何?」
「ふふ~ん。あのね…」鞄から小さなチラシを取り出して、わたしに見せてくれた。
そこには、『MUSIC HEART vol.26~大切な人は誰ですか~』と書かれていて、女の人が熱唱している写真があった。
「だいぶ前にね、クラスの友達が持って来たの。ヴォーカル教室の企画で、生徒さんじゃなくても、オリジナル曲があれば参加できるんだって」
「へぇー。おもしろそうね」
「でしょ。でね、その友達のお兄さんがそこのインストラクターやってて、歌詞書いてくれたら、ピアノで曲作ってくれるって言ってて、アタシ、参加させてほしいって言ったの。それでね…」
遠くのほう、反対の向かい側から、杖をつきながら元気な柴犬を散歩しているおばあさんの姿がみえた。
「それでね…アタシ、それからがんばって歌詞書いて、曲作ってもらって…そのライブに出ることになったの」
「えっ!すごい、すごいよ。琴葉ちゃん、ライブに出るの?」
「うん。ずーっと、黙っててごめんね。カズハちゃんには、ぜったい来てほしいんだけど、どうかな?」
「行くっ!ぜったい行くに決まってるじゃん」
「ありがとう。すごく緊張すると思うけど、カズハちゃんに聴いてもらえると、心強いな。がんばるね」
「うん。楽しみにしてる」
(いったいどんなステージになるんだろう)
琴葉ちゃんの歌うステージが、今から楽しみで、待ち遠しかった。
〈ワワンッ!ワンワンッ!ワワンッ!〉
おばあさんが連れていた柴犬が元気に吠えたかと思うと「待って!チロちゃん」おばあさんの手から離れてリードごとこちらに向かってきた。
「あぶないっ!」わたしは咄嗟に車道に飛び出すと、その犬を抱きかかえる。
「カズハちゃん!!あぶないっ!!逃げてっ!!」
琴葉ちゃんもあわてて車道に飛び出してくる。
〈ププーーッ!!プーーーーッ!!!〉
後ろから乗用車が大きなクラクションを鳴らしながら、突っ込んできた。
〈ドン…〉聞いたことのない、鈍い音が鳴り響く。まるで、体中が熱くなるような不安に襲われて、叫びたい。(琴葉ちゃん!)叫びたいのだけれど、声にならないまま…意識が…遠のいて…いく…
- 新学期が始まって一週間が経って、コスモスのピンク色や黄色が似合う景色が始まった。