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- 2017/3/1 13:20
- 小説「ふたりでひとつ」ハートの6②
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- 恐ろしさのあまり、わたしはそのまま床にしゃがみ込んでしまった。そのとき、彼がどんな表情をしていたのかも、怖くて見れなかった。
「大丈夫?」ふたりが駆け寄ってくれた。琴葉ちゃんと、おそらく一緒に帰る約束をしていたマサナオくん、なのだろう。
琴葉ちゃんは、立ち竦んだままの彼をギッと睨み付ける。
「アンタ、ケイゴくんね…」
「……」
「ケイゴくんなんでしょっ!」
「……」黙ったまま頷いたようだ。
「いい?アンタ、カズハちゃんにサイテーなことをしたのよ。カズハちゃんはたぶん、アンタを好きになりかけてた。ゆっくり、ゆっくりとでも、アンタと親しくなろう、そう考えてたハズよ。そんな彼女の気持ちを踏みにじったの。彼女を傷つけたのよ」
「ごめん…」
「ちゃんと、カズハちゃんに謝んなさいよ」
彼はわたしのほうを向いて、ひざまづいたかと思うと「すみませんでした」と土下座した。
もちろん、許すことなんてできなかった。
「…お願い、今日は先に帰って…顔、みたくない…から」ようやく落ち着いてきた声をふりしぼって、彼に告げた。
立ち上がって帰ろうとする彼に「ちょっと待て」と呼び止めたのは、マサナオくんだ。
「おまえさ、自分の感情や欲望だけでなんでも思い通りになると思っているだろ。やりかたが間違ってる。もっと、相手の事を想う気持ち、守ってやりたい、大切にしたい、そういう気持ちがないヤツに恋愛する資格なんてねぇよ」
3人で帰る道は、しばらく沈黙が続いた。
「あのね、カズハちゃん」最初に口を開いたのは、琴葉ちゃんだ。
「ん?なに」まるで何事もなかったような風が吹いた。
「まだ、紹介してなかったね、同じ陸上部の片瀬正直くん。ちょっとからかうと、顔、すぐ真っ赤にして、おもしろいの。でも、長距離、真面目にがんばってて…いざってときは、ビシッと言ってくれて、ちょっとかっこいいの。アタシが気になっている人、かな」
マサナオくんの顔を覗くと、おもしろいくらい顔が真っ赤だ。
「ねぇ、マサナオくんは、どう思っているの?琴葉ちゃんのこと…」
「え、ボク?そうだな…琴葉ちゃんは、いつもカズハちゃんの事をうらやましいくらい考えてて、周りにも気遣いができて、やさしくて、そういうところ、すごく好きだよ」
「ちょ、カズハちゃんのいるときに、さりげなく告白しないでよ」
琴葉ちゃんの幸せそうな照れ顔に、少しだけ傷が癒えた。
「ふたりとも、顔、真っ赤だよ」
- 恐ろしさのあまり、わたしはそのまま床にしゃがみ込んでしまった。そのとき、彼がどんな表情をしていたのかも、怖くて見れなかった。