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    • 2012/1/18 2:10
    • 幸せに溺れた小鳥
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    •  いつの日からか、私はぱったりと日記を書かなくなった。正確には書けなくなった。筆を取り、日付を何度辿っても、まるで文字は浮かんでこなかった。そして、そのまま書かなくなった。それがいつのことかは分からない。

       それは積み重なった一番上の日誌を手にとって、少しの間ページを捲れば容易く分かるだろう。ただ、それはあまり重要ではないのだった。問題は、思い浮かばなくなったということ。そして、それが意味すること。私はそれを忘れてしまっていた。だから、それを思い出さなくてはいけない。

       何の為に日記を書いていたのか。多分、それは失ってはいけないのだと思う。

       日記は、私の為のものだ。日々を綴ることは、簡単に考えても、私を縛りつける為のものだ。貴方の為ではない。貴女の為でもない。しかし、裏表一枚の履歴書なんかよりずっと、私をよく纏めている。

       では、私は何を縛っていたのだろう。私は何に縛りつけていたのだろう。他ならぬ私自身を。

       日記の山と向かい合って、しばらく思案した。夏の手前の蒸し暑い日だった。雨は降ってはいなかったが、雨の濃い匂いがカーテンを微かに揺らしていた。

       私はおもむろに山を切り崩し、手当たり次第に破いた。丁寧な仕事ではない。ただ地図を作りたかった。黙々と素手で千切り分ける。私がかつて仕事で作った、地図にして初めて見える世界が必要なんだと後から理由を付け加えた。

       そして、幾つかの地図が出来た。私の日常が、私の変貌が、私の秘密が、私の様々な側面が赤裸々に晒された。

       そういえば、あの日もこんな天気だった。私が嘘を吐かずに偽ったのは。あれが初めてではないのだろうけど、あの日はそして雨が降ってきた。

       嘘はなかった。日記を千切って作った地図の何処にも嘘はなかった。ただ、こうして眺めていると可笑しいくらいに私は必死に偽っていた。可愛らしい臆病さで縛りつけていた。

       そして私は、何度目か分からないが、妹の初恋の人の名を、私の幼馴染みの名を、思い出して囁く。

      「どうして私は知らなかったの、裕哉」

       遠くで雨が歩いていた。

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