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    • 2011/12/19 2:22
    • 星の流れのように
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  • "アバター"
    •  それは寒い寒い冬の頃で、風が吹けば痺れるような夜だった。

       私は家を抜け出して、彼の怪異探求に付き合っていた。星を喰らう化物がいるのだと、彼は言った。それは彼をからかって皆が創り上げた虚言だったが、彼は疑う素振りは見せなかった。

       彼が必死に漕ぐ自転車に乗りながら、私は寒さが辛くなって、全てを告白してしまおうかとも思った。私は虚言作りには荷担していなかったから、それを語っても構わないのだ。だが、息を切らせて走らせる彼を見て、結局私は唇を固く結んでしまった。

       どうして怪異を探すの。そう私が聞いたのは自転車を降りて山道を登る最中だった。そんなことしても、何も変わらないじゃない。

       彼は寂しそうにこう告げた。怪異は世界の歪みだと思う。それを探す僕は世界を変えたいのだろうね、と。

       山頂に辿り着いて、私と彼は寄り添うように座った。私の左手と彼の右手をポケットには入れないで、重ねて、夜空を見上げた。

       歪みを見つけて何か変わるの。
       変わるさ。
       なんで。
       歪みはさ、なかったものがあることさ。
       つまり。
       世界を覆すような体験をしたい。

       私は酷く乾いた唇を彼のそれに重ねて聞いた。

       どう?
       世界は変わった?

       いや、変わらなかったよ。世界は何も変わらなかった。少し吃驚したけれど。君の唇、荒れてるね。

       私は、泣いてもいい。泣いてもいいのだと自分に言い聞かせながらも、笑顔を作ってごめんと答えることしか出来なかった。どうして、

      「あ」

       彼が視線を奪われた先に、尾を引いて消える星があった。私と彼は呆然としながら、その星が消えた夜空を眺めていた。いつまでも、いつまでも私達は化物を待っていた。

       左手が痺れて、何を語るでもなく時間が過ぎて、月が夜空を照らして星が見えなくなった頃に帰路に着いた。

       私達は世界を覆すことは出来なかった。

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