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    • 2011/12/1 0:09
    • アサイラム
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    •  彼は一つのインテリアだった。部屋の外に彼の居場所はないのだと、私は思った。それほどまでに彼は部屋に落ち着いていたし、部屋は彼ありきであった。

       そこは近くて遠い。街の真ん中にあったが、私達の生活の外にあった。日常の跡形は薄れているが、懐かしいような安らぎが漂っている。眠ってしまえば、きっと優しい夢を見れるだろう。

      「僕は扉を開けなかった人間だ。だから、君は休んでいくといい。何時だって此処は君を受け入れる」

       白い肌の彼は微笑んで、私に紅茶を注いだ。変に構えることのないラフな態度だが、品の良い柔かさもある。
       響子の紹介で訪れたそこは、評判に違わず素敵なところだった。素敵とただ一言にいっても様々だが、此処は「癒される」というのが正しい。それも仔犬や仔猫ではなく、森や神社に近い癒しだ。

      「素敵な場所ですね」
      「誰にとってもね。ここは外側だから」
      「そう、ですか」

       それからしばらく他愛のない話をした。話題は転々としたが、彼はまるで鏡のように私の好みに合わせていた。居心地のよい会話だった。
       私にとって、それはふとした疑問だった。

      「どうして、こういうことを始めたんですか」

       彼はぴたりと合わせるのを止めた。そして、紅茶を一口呑んで、何処か遠いところを見るようにして答えた。

      「もし彼が話を聞いてくれたのなら、僕は変わっていたから。間違いなく此処には居なかった。話を聞いてくれる、彼がするのはたったそれだけなのだけど、それで全てが覚めるのに。その彼が居ない世界だったんだよ、ここは」

       私は首を傾げた。彼は一体何の話をしているのか見当がつかなかった。ましてや、これが理由だとは思えなかった。
       彼は空になったティーカップをソーサーに置いて、私を見た。嫌になるほど真っ直ぐに。

      「だから僕は話を聞くんだ。聞いて欲しかったから、聞くんだ。僕は扉を開けなかったから、君がまた扉の向こう側に行けるように」

       彼は祈るように頭を下げた。

      「今は、おやすみ」

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