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    • 2014/10/19 3:55
    • 手遊びの小説
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    •  私は随分と愉快なことを考えていた。あと一言私が告げるだけで、この人はきっと私を不幸にするだろうと考えた。それも私の人生の大半を。

       夜が月に覆い被さって、何度か太陽の昇った秋の日はまだ冷え込む前だった。私は夏に着そこねた檸檬色のスカートを翻して歩いた。それに足音が続くのが愉快で仕方ない。少し欠けた月はそれでも綺麗で、夏を過ぎた墓場は少し温もりを取り戻していた。何もかもが愉快だった。

       思えば何で気付かなかったのか。私が欲しいものなんて、手の届くところにしかないのに。もっと正直に言えば、届かなければ「酸っぱい葡萄」なのだから。

       川の土手に登ると遠くに光の筋が走っていくのが見えた。金属の軋む規則的な音が山の向こう空の彼方に遠ざかるのを見届けながら、私はそこで振り返った。そこは何でもない場所だけど、二人が出会った場所だった。ねぇ、カンパネルラ。あの言葉は君に届いたんだろうか。

      「いいよ」

       私は作者に告げた。愉快な一言を。

      「少し落ち着いて考えたけど、やっぱり答えは変わらなかったや」

       作者は表情を変えなかった。それはとても不愉快な表情だった。

       ごめん、と作者は謝った。まるで場違いな台詞で私を随分と戸惑わせた。それから少し饒舌に作者は語った。不愉快のあまりに私はあまり覚えられなかった。愉快だったのは、よく考えたら僕は君の人生の大半を不幸にするだろう、という一言だけで、いつも側に居ることはできないから君の思う通りにはいられないから云々だから付き合えないという旨をやけに文学的表現で整然と論じていた。

       作者は観たこともない表情になっていた。強いて私の知っている感情に当てはめるなら、それは哀しげな表情だった。そこまで考えて、ふと思い至った。私は作者の顔を観たことがあった。それは酸っぱい檸檬に手を伸ばした後の祭りを撮った幼い頃の私の顔で、祖父が作っていた酸っぱい葡萄の甘さに気付いた顔である。

      「……最低ね」

       秋の夜空に不愉快な音はいつまでも響いていた。

      >>

      「僕はね、祖母の振る舞う巨峰の甘さを幼い頃は分からなかったんだ。それは幼い口には無駄に大きくて、新しい果物に比べたら酸っぱいものだったんだ。僕は後悔はしていない。僕は祖母と巨峰を美味しく食べることができたから。僕は、後悔してないんだ」

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