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- 2011/5/24 13:04
- 花山天皇の出家-訳②
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- その夜清涼殿の藤壺上御局の小戸から帝がお出ましになられた所、夜明けの空の月がたいそう明るく照っておりましたので、帝は
「あまりにあらわでは気が引ける。どうしたらよかろうか」
とおっしゃったのですが
「そうは仰せられましても、とりやめなさる訳には参りますまい。神璽と宝剣が既に春宮の御方に御渡りになってしまわれているのですから」
と粟田殿が急き立てて申し上げなさいました。
なぜかと言えば、まだ帝がお出ましになられる前に、粟田殿が自ら神璽と宝剣を取って、春宮の御方にお渡ししてしまっていましたので、帝が宮中へお帰りなさるような事はあってはならないとお思いになって、このように申し上げなさったということです。
明るい月の光を帝が気が引ける思いでいらっしゃる内に、月の面に群雲がかかってわずかに暗くなってきましたので、帝は
「私の出家は成就するのだ」
とおっしゃって、歩き出されますと弘徽殿の女御のお手紙で平生破り残してお体から手放さずに御覧になっていたのをお思い出されました。
「しばらく待て」
と、取りに入られた時の事でございます。粟田殿が
「何故そのように未練がましくお考えになられるのです。今が過ぎてしまえば、自ずと差し障りも出てまいりましょうに」
と、泣き真似をなされましたのは。『リンク:花山天皇の出家-訳①』
『リンク:花山天皇の出家-訳②』
『リンク:花山天皇の出家-訳③』
『リンク:花山天皇の出家-訳④』
- その夜清涼殿の藤壺上御局の小戸から帝がお出ましになられた所、夜明けの空の月がたいそう明るく照っておりましたので、帝は