ノモイさんとモバ友になろう!
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- 2013/6/1 2:49
- 夢の中の恋人
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- ある所、若い男女が恋に落ちた。
募る思いとは裏腹に、二人は離れ離れになってしまう
女親の許婚の策略からである。
男は、一度だけでも再び逢いたいと日々を過ごし
女は、男のもとに嫁ぎたいと夢をみる。
しかし、無情にも女は病に倒れ、床臥してしまう。
風の噂にその事を知った男は、意を決し女のもとへと出掛ける途中!
路傍の占い師に声を掛けられた。
『もしもし、そこの お若いの、行ってはなりませぬ、行ったら命を取られてしまいますよ』と
男がもし女に近付く事あれば、その首跳ねてやろうと許婚はてぐすね引いて待伏せているのである。
それを聞いて困った男は占い師に、この命と引き換えに女の病を癒したい事と、一目だけでも逢ってもう一度この両腕に抱きしめられるのならと懇願する。
『ならば、そなたの願いを叶えよう、これを寝る前にお飲みなされ』
そう告げられ手渡された青いガラス瓶には沢山の銀色に鈍く光る丸薬が入っていた。
『お代はいりませぬ しかしその粒は、そなたの命のカケラ、全て飲み干すと絶命致します。』
口もとに笑みを浮かべ、占い師の目の奥には妖しき鬼火が写っていた。
果たせるかな、その日の晩から二人は夢の中での逢瀬を重ねる事となる。
男の命の残り火が減る一方で
女の病はみるみる快方して行く
瓶の中身も底を尽きかけた頃
目眩く快楽の刹那を 互いの中で自身を相手を感じながら
二人は永遠の契りを交わす。
最後の一粒を飲み終えた晩に、男は事の次第を女に話すと、翌朝冷たき骸となっていた。
女は悲しんだ、その日の晩から夢で逢う事が出来ぬゆえから男の死を知ったからである。
幾日も幾日も悲しみに暮れながら、乾かぬ涙を拭い女は夢で聞いていた占い師のもとに向かい、烈しく批難する。
『そなたの事を私は決して許せません』
手には、震える両手に合口を握りしめ詰め寄る。
占い師は指をさす。
『娘やそのお腹の命は誰かご存知か』
言うなり、臨月間もない膨らみに手をやり、瞳にギラリと光る鬼火を宿し妖しげに
女の愛した男の名前を呟くのであった。
『○○○よ、お前は私のものだ』
女に激しい戦慄にも似た吐き気が走る
『うっうっうえっ』
…女は目を覚ます。
梅雨の昼下がり、じっとりと汗をかいていた
臨月から四ヶ月目
悪阻もそろそろ収まる頃だろう
女は青い瓶から一粒悪阻止めの丸薬を…ごくりと飲んだ。
~おしまい~
- ある所、若い男女が恋に落ちた。