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- 2018/9/27 17:13
- 短編
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- 猫目月夜のことでした。
白い袖無外套(ケエプ)に帽子(フード)、ふわふわ手袋もやっぱり白で、月明かりの夜に浮き上がるような少女は走っていました。
たったったっ。
「早く帰らないと・・・・・・」
凍てつく寒さに頬が張り詰める。
風が吹いて、木々が不穏に葉擦れを鳴らす。
まるで、“間に合わないよ”とでも言われているようだ。
たったったっ。
吸い込む冷気が喉に、肺に痛い。
(間に合って……!)
漸く、彼女の家、大木に着いた。正確には、彼女の家は、大木の洞(ウロ)にある。
(怖い……)
外洋燈(ランプ)は切れていて、大木の外側の階段は闇に続いているようだ。
(登るしかないもん!)
少女は、外側の長い螺旋階段をピョンピョン跳ねるように登っていく。
少し転びそうになりながら、なんとかドアの前に着くが、今度は鍵がなかなか入らない。
(早く!!)
泣きそうになりながら、ガチャリ、と鍵を開け重い木の扉を押して中に入る。
(間に合う!)
ホッとするのも束の間。
奥の扉がガラリ、とスライドする。
少女は1人暮らしで。
他に誰も人は一緒に住んでいなくて。
つまり。
(まさか……。)
「にゃぁ」
「チビちゃん、扉開けられるようになっちゃったのー!凄いねー!?」
とりあえず、靴を脱いでチビを抱き上げる。
時計は21時12分前を指している。
約束は22時。
「間に合ったー。」
少女はPCの電源を入れた。
トン。
背中を叩かれる。
チビは手に抱いている。
(え……?)
他には、何もいないはず。
誰もいないはず。
他の気配なんてしない。
いるはずない。
しかし、静まり返った部屋は、いつもより何かが欠けているような感覚がする。
少女は意を決して振り向いた。
そこにはーー。
何もいなかった。
ただただ、部屋の木目調の壁があるだけだ。
気のせい……だったのかな。
パソコンに向き直る。
「!?」
思わず飛びずさった。
机を挟んだ向かい側に、目から鼻にかけてだけ仮面を被った男が立っていた。
会ったことは無い。
はずだ。
男は穏やかに微笑みを湛えている。
「初めまして、お嬢さん」
瞬間。悟った。不味い。
この男は関わってはいけない。
本能が警鐘を鳴らす。
きっと、この男は私を消しに来たのだ。
だって私はーー。
- 猫目月夜のことでした。