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- 2020/12/12 7:49
- 創作昔話【大鎌様】
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- 昔々ある処に久作というやたら物持ちの良い男がいた
久作は畑道具の鋤や鍬や鎌はもちろん、家で使う鋏や包丁まで、刃の部分が削り過ぎてなくなるまで使った
しかも着ているものはいつもぼろぼろで、継ぎはぎだらけだった
そんな久作のことを村人たちは『どけちの久作』と呼んでからかっていた
ある朝、村人の一人が家の中で無惨に食い殺されているのが見つかった
村人たちは熊の仕業だろうと目星をつけたが、玄関の戸は閉じられたままだったし、熊が入ってきたにしては家の中が整然とし過ぎていた
しかも同じようなことが次の日も、そのまた次の日も続いたので、村人たちはすっかり怯えてしまい、昼間も家で閉じ籠るようになってしまった
ある晩、久作は妙な夢を見た
それは夢というよりお告げだった
『きゃつの次の獲物はお主じゃ… 助かりたくば我が依代(よりしろ)を玄関に吊るすがよい』
久作が目を覚ますと、枕元には一本の古びた鎌が置いてあった
そこで久作は夢で言われたように、玄関に鎌を吊るした
その晩、久作は再び夢を見た
夢の中で久作は身動きひとつとれず、横になったままの姿勢で固まっていた
すると、ざわざわとした嫌な気配が近付いてくるのを感じた
嫌な気配は玄関の前で立ち止まると、そのまま戸をすり抜けて入ってこようとした
その時だった
吊るしてあった鎌が、まるで生きているかのように宙を舞い、そのまま虚空を一閃した
『ぎゃああああっ!!』
というおぞましい雄叫びが聞こえてきたのは正にその瞬間だった
やがて雄叫びの主が、嫌な気配とともに遠くに去って行くのが久作にも感じられた
そして久作は再びお告げの声を聞いた
『さぁ…これできゃつは二度と現れまい 私の依代は村を全て見渡せる高台にでも祀れば、今後この村は安泰じゃ!』
ありがとうございます
と言いかけて、久作はそこに誰もいないことに気付いた
ただ一瞬…久作は子供のような小さな影を見た気がした
翌朝
久作が目を覚ますと、玄関には鋭利な刃物で切られたような鬼の腕が転がっていた
久作が夕べの一部始終を村人たちに話すと、すぐに鎌を祀るための社(やしろ)を作ることになった
社はお告げの声が言った通りに、村を全て見渡せる高台に作られた
鎌は『大鎌様』と呼ばれ、社の中にたいそう丁寧に祀られた
それ以来、村では五穀豊穣の日々がずっと続いたという
(おしまい)
- 昔々ある処に久作というやたら物持ちの良い男がいた