雪騎941Xさんとモバ友になろう!
日記・サークル・友達・楽しみいっぱい!
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- 2007/12/29 23:56
- 夕焼けセレナーデ(1)
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- もうすぐ夜が明ける。俺は、瀬恋那の横顔を見た。
閉じられた瞼に、長いまつげが影を作っている。
「瀬恋那……」
そっと名前を呼んでみる。ああ、瀬恋那は本当に……綺麗だ。そんな当たり前のことを考えて、思わずため息が出る。俺は、瀬恋那と初めて会った時のことを思い出していた。
俺が初めて瀬恋那と会った場所は、街中にある小さなスタジオだった。簡素なそのスタジオに、俺は新しく出る雑誌のモデルとして来ていた。自分で応募した訳じゃない。友達がふざけ半分で勝手に応募して、なぜか採用されてしまったという、最悪のパターンだった。俺はもちろん慌てて雑誌の会社に連絡をして、採用を取り消してもらうように頼んだ。
「そんなこと言われてもねえ、君。今さら別の子を探すのも大変なんだよ。悪い仕事じゃないんだから、ね!やり出したら楽しくなるから」
結局、担当の人にそんな風に半ば強引に決められてしまった。しかも家族にも無責任に賛成された。そんな風にして、俺はスタジオに行く羽目になった。初めは正直言って最低だった。
モデルは俺を合わせて七人で、その中の一人が瀬恋那だった。
簡単に説明を受けてから、撮影が始まった。素人の俺は、ただ言われたようにするだけだった。何でこんな目に遭わなくちゃいけないんだ、と終始思いながら。
いろんな服を着せさせられて、いろんなポーズをとらされて、疲れて来た頃。急に肩をたたかれて振り向くと、そこにはかわいい女の子が立っていた。
「アユキって君のこと?」
「うん」
「あたし、セレナ。表紙はあたしと君だって」
「え……」
「早く一緒に来て。さっさと全部撮って帰りたいから」
「ああ……」
瀬恋那は乱暴に俺の腕を掴んで、カメラマンのいるところに引っ張って行った。それが、俺と瀬恋那の出会いだった。
「連れて来たよ?早く撮ってね」
「ああ……じゃあ、二人は向かい合って」
訳も分からないまま、瀬恋那とのツーショットの写真を何枚も撮った。
「お疲れさん。これで今回の撮影は終了!」
そういうカメラマンの声を聞くと、瀬恋那は挨拶もせず、一目散に帰って行った。
その時俺は、瀬恋那に特別な感情は全く抱かなかった。今こんなに瀬恋那を愛しているなんて……あの時には夢にも思わなかった。
- もうすぐ夜が明ける。俺は、瀬恋那の横顔を見た。