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    • 2016/1/31 3:31
    • 在りし日の思い出
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    • 駅から降りると眼前に天龍川が音もなく静かに流れている。車掌に定期券を見せ、坂を下っていく。南宮大橋を渡りながら前後、山に抱かれた阿南の空を仰ぐ。


      同じ列車を降りた友達が、平日ほどではないにしろまばらに歩いて行く。紺色のブレザー、緑のラインがさりげなく入った灰色のスラックス、それぞれの部活に向かっていく。俺は病院前で別の道へと歩を進める。


      坂、平地、坂、平地、坂……


      左肩にかけたバッグが不規則に揺れ、痛む。暑い季節でもないのに汗が額を伝う。拭いながら一歩一歩進む。
      およそ三キロの坂道を登ったその先に俺がいたグラウンドがある。自販機で清涼飲料水を購入し、グラウンドに入る。被っていた帽子を脱ぎ、深々と一礼する。


      信心深い方ではなかったが、朝のグラウンドは、なんだか胸がすっとする気持ちだ。なにか神聖不可侵な静謐さを湛えている。


      「一番乗りだ」


      辛い練習を予想しながらも、少し、気持ちの羽が揚力を得る。乾いたグラウンド、足跡のないグラウンド、球児を育むグラウンド。
      部室を開け、中で着替えていると、既にユニフォームを着た仲間が来、グラウンドへと行く。少しでも体力を温存したいので俺は部室で携帯をいじる。しかし次々と来る仲間に引っ張られ、グラウンドに入った。練習前からティーバッティングに精を出す殊勝な仲間に少々の引け目を感じ、軽めに自分も打つ。


      しばらくするとキャッチボールをしていた者が白い車に気づき、


      「おい、来たぞ」


      それを聞いた瞬間俺は覚悟を決める。グラウンド前で車から長身の、ユニフォームを着た男性が降りてくる。


      「監督、来たか」


      トランクから取り出したノックバットを片手にショルダーバッグを提げ、まだ若若しい歩みで、うなだれるように、一歩一歩、来る。


      「挨拶!」


      主将の一声で談笑していた部員のざわめきが静まり、


      「礼!」


      一呼吸、腹の底から、


      「おねがいします!」


      在りし日の土曜日の練習風景、そのはじまり。

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