日記・サークル・友達・楽しみいっぱい!
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- 2013/4/30 11:13
- 涼しくなろう
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- 「おまえ、早くしろよ」
男は支度をしている妻に向かって言った。
女ってやつは本当に時間がかかるもんだ。
「もうすぐだから。そんなに急ぐことないでしょ。…もう、ほら翔ちゃん、バタバタしないの!」
確かにせっかちだが、今さら仕方がない。
今年もあと少しで終わりか…。
男はスーツのポケットからタバコを取り出し、火をつけた。
「いきなりで、お義父さんとお義母さんビックリしないかしら?」
「なあに、孫の顔を見ればすぐに笑顔になるさ」
男は傍らで横になっている息子を眺めて言った。
「お待たせ。準備できたわよ。ねえねえ」
「なんだ?」
「あなた、ここ」
女房が男の首元を指差すので、触ってみた。
「あっ、忘れてた」
「もう、ほんとにそそっかしいんだから。こっち向いて」
「あなた…ずっと愛してるわ」
女房は男の首周りを整えながら、呟いた。
「何だよ、恥ずかしいじゃないか」
「たまにはいいでしょ、夫婦なんだし」
女房は下を向いたまま、照れながら微笑んだ。
「俺も愛してるよ」
こんなにはっきり言葉にしたのは本当に久しぶりだ。
少々恥ずかしかったが、悪い気分ではない。
男は、女房の手をきつく握った。
「じゃ、行くか」
「ええ」
男は、足下の台を蹴った。
- 「おまえ、早くしろよ」