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    • 2013/2/21 4:49
    • ん~、駄目だ
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    • 「試飲でもいかがですか?」
      スーパーで買い物中、後ろから声をかけられた塚原は振り返った。
      「いや、結構です」
      そう言い、こぶりのカップを持って立つ女の顔を見た。
      「み、宮崎さん?」
      「え?」
      彼女は目を見張って、こちらを見た。
      「塚原くん?」
      と、彼女は、宮崎美奈子は自信なさそうに首を少し傾げなから言った。
      「そうだよ。宮崎さんが、こんなところでアルバイトしてるなんて、意外だな。エプロンもして」
      「なにさ、似合ってない?」
      「いや、でも、宮崎さんならもっといい仕事が見付けられそうなのに、と思って。確かお父さんは社長でしょ?」
      宮崎美奈子は眉を寄せ、視線を落とした。
      「あれ、違ったかな。もうだいぶ経つから、間違ってたら、すみません」
      「いえ、確かに、父は社長でした。でも、死にました」
      と言った。宮崎美奈子の視線があがり、真っ直ぐ塚原の目を見た。
      塚原は息を飲んだ。宮崎美奈子の父親が死んでいたことに驚いたのではない。彼女の目に悲しみなどなく、むしろ、怒りや憎しみといったものがメラメラ燃えたぎっているように光ったからだ。
      「な、何か、あったの?」
      宮崎美奈子からの視線を反らさずに、まばたきすら我慢して、塚原は訊いた。
      宮崎美奈子の目にうっすらと涙が浮かんだ。
      「死んだだけよ」
      それ以外言いたくないらしい。
      「まあ、僕も、大したことは出来ないけど、力になれることがあったら言ってよね」
      宮崎美奈子の目が、ふっと緩んだ。
      「ありがとう」
      宮崎美奈子は、試飲を配る人の顔に戻っていた。
      よく知ってる顔だ。中学まで一緒だったのだ。十年ぶりでも、変わっていない。
      「それじゃ」
      「また寄ってね」
      「ああ」
      塚原はもっと、宮崎美奈子の父親が本当にただの死だったのか、聞きたくなった。
      病気でとも、事故でとも言わず、死んだとだけ答えた時の彼女の視線には、やくざ顔負けの、息を飲むほどの迫力があった。
      宮崎美奈子にあんな目が出来るなんて初めて知った。塚原はそう思いながら、口を開こうとした。
      「いかがですか? おいしいですよ」
      宮崎美奈子は声を張らせて、アピールしている。
      しかし、それに気を止める人はいない。素通りする人の数が増えるだけ、宮崎美奈子の頑張りが無駄に見える。
      彼女は塚原がまだそこにいるのを知ってか、口元に笑みを浮かべて、持ってるカップを自分の口に運び、飲んだ。
      「一つ、もらおう」
      と、塚原は手を伸ばした。

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