◎卍◎さんとモバ友になろう!
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- 2013/2/10 2:53
- 残されたもの
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- コーヒーメーカーで煎れて、飲む。
コーヒーを待っている時間がいい。鼻に漂うコーヒーの香りもいいが、何も考えないこの一時がいい。
そろそろ出来る頃だ、と、棚からコーヒーカップを取り出し、テーブルに置こうとした。だが、コーヒーカップはテーブルの角に当たり、手から滑り落ち、ガチャンと音をたてて割れた。
しゃがんで、破片の一つを拾い、てのひらに乗せた。
もう2年前になる。別れた彼女が、
「2つ1組だったからペアにと思って」
と、買ってきたコーヒーカップだった。
特別な日でもないから、どうしたのかと思ったら、
「急に欲しくなったの」
うふふ、と、顔を赤くして、微笑んだ。
てのひらに乗せたコーヒーカップの欠片に、彼女の、あの時の顔が蘇ってきた。
別れた原因は分からない。
『さよなら』
一言だけ書かれた手紙がテーブルに置かれていて、あわてて外に飛び出し、探した。心当たりがある場所を全て当たる頃、日付が変わり、部屋に戻った。
もしかしたら彼女が帰ってきてるかもしれない。そう思った。
玄関の鍵が開いていた。
しかし、彼女の姿はなかった。
鍵が開いていたのは、単に自分が鍵をかけ忘れただけだったのだ。
そのままぐったり眠った。彼女が帰ってくるかもしれない、そう思いながら眠り、彼女が帰ってきた夢に飛び起き、部屋を見回す。
彼女のいない現実の世界、彼女のいる夢の世界、この二つの世界を交互に行き交う中でも、あの彼女が買ってきたコーヒーカップはどちらにも必ず出てきた。
今は、もう見ない夢だ。
ただ、そんなコーヒーカップが、割れた。
割れて、思い出した。
それだけだ。
どんなものだって、いつかは壊れる。
壊れるんだ。
早く片付けよう。
そう思いながら、破片の一つ一つを、丁寧に、大切に、てのひらに積み重ねていった。
- コーヒーメーカーで煎れて、飲む。