くろのアさんとモバ友になろう!
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- 2010/7/9 1:45
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- 遠い山の頂に男は棲んでいた
空気は薄いが、澄んだ空気が呼吸の度に身体に染みるのがよくわかる。
中腹まで降りて山菜を採る。
別にここまで降りてこなくとも食べるものがないわけでもないが、小さな昆虫や大きな獣とすれ違うのを、男は楽しみにしていた。
昆虫は男の回りを旋回するものもいれば、目もくれずその躰をひきずっていったりして見ていて飽きないし、動物が不意に立ち止まってこちらを見つめてくると、言い知れぬ高揚感に駆られる。
長い長い、いつからか覚えていないほど長い頂の生活の中で、男が一番愛しているものは暗い空のきらめき。
暗くなってから上を向くと、小さなきらきらしたものがたくさん広がって、男の視界を包み込む。
男は、一際目立つものを拾って名前をつけていった。
大きな熊。水を入れる瓶。美しい女が踊っている………
……そんな夢を見た。
神様は、自分が何か足りないと思っていた真っ暗な夜に、きらめきを散らすことにした。
夢で見たきらめきを。
ひとつひとつ、夢を辿りながら。
熊…魚…乙女………
彼の夢の景色。見上げれば誰でもその世界へ
- 遠い山の頂に男は棲んでいた