ひよこびんさんとモバ友になろう!
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- 2014/5/16 11:39
- 未来はきっと⑧~幕恋
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気がつくと周りを取り囲んでいた男の人達が
つぎつぎ倒れていた。
やっぱり。慎ちゃんって凄い。
慎ちゃんが大声で叫ぶ。
「危ない!姉さん!」
後ろに人の気配を感じてあたしは振り返る。
男の人がすぐ近くに立っていた。
あ、斬られる!
と思った瞬間、強い風がふいた。
風でスカートがめくれる。
「やだっ!」
あたしは慌てスカートを押さえた。
「おぉっ?!」
目の前の男の人が動揺する。
あたしは思い切って男の人の脇腹に竹刀を打ち込む。
「すけべぇ!」
「うがっ!卑怯な!」
わ、わざとじゃないし!
「姉さん!こっちです!」
慎ちゃんがあたしの手を引っ張って走り出す。
慎ちゃん…!
やっと、やっと逢えたんだ…。
手を引かれながら、あたしは逢えた嬉しさを
噛みしめていた。
あたし達は竹林の中に身を隠した。
「ここまで来れば、大丈夫っス」
「よかった…」
あたしはほっとして、慎ちゃんの顔を見上げる。
うわぁ…、これは明らかに。
うん、怒ってる。
「姉さん」
「は、はいっ」
「なんで戻って来たんスか」
「どうしても、慎ちゃんに逢いたくて…」
「……」
つながっている手が強く握られる。
あたしは慎ちゃんの表情を見て、はっとする。
「おれは…」
見ているこっちが切なくなるくらい
すごく辛そうな表情だった。
「おれは…、姉さんの幸せを、
やっと…やっと守れたと思ったのに…」
「慎ちゃん…」
「なんで…、なんでこんな一番危険な所に
戻って来たんスか!!」
まるで心が張り裂けそうな、悲痛な叫びだった。
慎ちゃんの言葉が、苦しいくらいあたしの心臓を
ギュッと締めつける。
「姉さんは一番大切な人だから!
絶対に守りたい人だから!
ずっと幸せでいて欲しかったから!
おれの全てをなくしても、姉さんだけは…!」
「慎ちゃん、それは違うよ!」
あたしは必死で首を振る。
「おれの話しをちゃんと聞いてください!
姉さんが生まれた場所へ、安全が約束された場所へ、
そこに帰すことが最善なんです!」
慎ちゃんは一気に吐き出すように続ける。
「姉さんの幸せを、笑顔を守ることが、
おれの一番の願いなんです。
それを成し遂げることがおれの役目なんです!」
あたしの、幸せ。
本当のしあわせ。
それって、やっぱり…!
「慎ちゃん!どこにいたって、
いつの時代にいたって同じだよ!
あたしはあたしなんだから!
なにも変わらないんだから!」
つづく