ひよこびんさんとモバ友になろう!
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- 2014/5/16 11:14
- 未来はきっと④~幕恋
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あたしは焦って歩き出そうとする。
けど、彼はまだ立ち止まったままだ。
不思議に思って振り返る。
「あ、先輩っ。あの…聞きたいことっていうか…」
「うん?」
「勘違いかもしれませんけど…。
今日の朝ごはんのとき…」
なぜか彼は顔を真っ赤にして、口ごもっている。
どうしたんだろう?
「?」
あたしは首をかしげる。
何か言いたそうなんだけど?
「えーと…、先輩って、なんかじっと見てたりとか…」
「なにを?」
すると、真っ直ぐ立っていた彼の姿勢が
ぐにゃりと崩れる。
「あー…、おれじゃあ、なかったんっスね…。ははは」
「???」
「いいんです。ただの勘違いだったみたいっス」
すると、彼が人懐っこい笑顔になる。
あ、この笑顔も。
なんで、彼はこんなに似てるんだろう。
そんな笑顔みせられたら、あたし…。
だんだん、心臓がどきどきって早くなる。
やだな。
ただ似てるだけなのに…。
「いま気づいたけど、先輩ってうちのばぁちゃんに
似てるっス」
「は?おばあちゃん?!
あたし、おばあちゃんじゃないし!」
「え、いや、そう意味じゃ…!」
「もう!そんなこと言ってるヒマがあったら
さっさと練習にもどるよ!」
結局、なんの手がかりもつかめないまま、
合宿は終了した。
あたしは何事もなかったみたいに東京に帰ってきた。
部員のみんなと一緒に新幹線を降りる。
タイムスリップする前と何一つ変わっていない。
変わったのは、あたしの頭の中だけ。
ずっと重大な忘れ物をしたみたいな感覚が続いている。
そして、あの時代で過ごしたことをいつも考えている。
大切な人に出逢って、大切なことをいくつも教わった。
すごく貴重な時間だった…。
あたしは見慣れた景色をながめる。
いつも通りの街並み。
いつも通りの日常。
今日だって、明日だって、いつもと変わらない日…。
「乙女の顔になってる」
突然、カナちゃんに突っ込まれる。
「は?!」
あたしはびっくりして両手でほっぺたを押さえる。
「恋をしてます!って顔してるよ?」
「こ、こここ恋っ?!」
「あたしの目はごまかせないよ~!誰なの?!」
カナちゃんって、ときどき鋭い。
いつも一緒にいるからかな。
「う~ん、なんて言うか…、歴史上の人物?」
「ちょっと~!ごまかさないの!」
本当なんだけどな…。
つづく