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- 2006/6/16 16:03
- 雪桜
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- ~雪桜~
――AM6時。今日もいつもの1日が始まる。
僕は2年前から自分の家とは違う場所に住んでいる。ここは、病院の個人部屋だ。
2年間もいると、もう入院というより、自分の部屋がもうひとつ増えたような感覚になる。白い壁の部屋にベッドが真ん中にあって、奥にはポツンと窓がひとつあるだけ。片隅にテレビが1台置いてあり、2年間外に出られない生活を送ってきた僕にとっては、テレビと窓越しに景色を見ることだけが、外の世界との接点だった。
この生活は、僕の生活を一変させた。入院するまでは、当たり前のように学校へ行き、友達と遊びまわって、帰る家があって、と普通に暮らしていた。中学生になり、生れ付きもっていた病気が再発するまでは――当たり前のことが当たり前でなくなると、入院するまでは明るかった僕が、急に暗くなり、ふさぎこんでしまった。医師からは90%治らない、と言われた。
午前中に検診を受け、午後からはずっとテレビを観てるか本を読んでるかで過ごす。こんな日が退院するまで…あるいは、命が絶える日まで、ずっと続くはずだった。しかし、転機となる日は突然やってきた
ある日の午前中、いつものように検診を終えた医師が突然「よしっ状態も良好だし、明日・明後日と外泊してきていいよ」と言ってくれた。初めてのことだ。家族に連絡し、迎えに来てもらうことにした。最初は戸惑ったが、家族の到着を待つ間、2年ぶりの帰宅に、嬉しさがこみあげてきた。
夜、両親が仕事帰りに駆け付けてくれ、病院を出た。外に出てめいっぱい深呼吸をした。外の空気。久しぶりに乗った車。車から流れる景色。すべてが新鮮だった。まるで初めて見るかのように夢中で見つめていた。その時はちょうど雪が降っていて、あたり一面雪景色になっていた。大好きな冬の季節に外に出られるなんて夢のようだった。
あっという間に2日間が過ぎていった。今日は病院に戻る日だ。今日も静かに雪が降っていた。車に乗るため庭の前を通ると、昔からあった大きな木が、雪にまみれてそびえたっているのが見えた。その時母が僕に言った。
「冬は必ず春になるんだよ」この言葉と、雪にまみれても微動だにせず春の訪れを待つ大きな木の姿に、僕は強く励まされた。
空から雪が降り、それが白い花びらとなって枯れた木を彩る。
雪桜――春とはまたひとつ違った、冬に咲く桜――
僕にはこう見えた
- ~雪桜~