アンネローゼさんとモバ友になろう!
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- 2013/8/28 22:32
- 終わりなき雨
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- いつの頃からだろう。この場所に雨が降り始めたのは…
あれは30年ほど前。確か…僕が6歳くらいの時だろうか…
僕が生まれ、40代後半でじいちゃんになったと喜んでいた祖父を連れ出し、この海に来たのは。
あの日は雲ひとつない晴天でこの浜辺も海水浴客であふれていた。
僕は祖父の手を引き、比較的空いている岩場へ行った。カニやイソギンチャクが沢山いて楽しかったのを覚えている。
祖父の優しい笑顔が僕はとても好きだった。
だが、そこで何かがあったんだ。
どうしても思い出せないが…
記憶にあるのは祖父の顔。引きつった祖父の顔。恐怖と涙の入り混じった祖父の顔…。
その日以来、この場所には誰も来なくなった。
誰も居ない…物音一つしないこの場所で、僕はいつも一人で祖父を呼んでいる。
あの日僕が無理にこの場所へ連れて来なければ…
後悔が押し寄せる。
この雨は僕の心の中に降る、祖父が流した涙なのかもしれない。
ふと、見上げると遠くに人の影が。
30年間誰も来なかったこの場所に?
「じ、じいちゃん?」
ひどく年を取っていたがあれはじいちゃんだ!
僕は全速力で駆け寄って抱きついた。
祖父は優しい笑顔で僕を見た。あの時の笑顔だ。
「やっぱりここにいたのか。すまなかった私だけ長生きをしてしまったよ…もっと早く来てやりたかったが、80を過ぎてしまったよ。自分から命を絶つと、お前の所には行けないと言われてな。お前の事を一日と忘れた事などなかったよ。随分待たせて淋しい思いをさせてしまったな」
祖父は僕の頭を幾度も撫でながらそう言った。
気がつくと、僕と祖父の姿はあの日2人に戻っていた。
「死んだのは僕なの?だから誰もいなかったの?」
祖父は何も答えず「行こうか」とだけ言った。
今度は祖父に手を引かれ歩き出す。そして……
振り向いたその場所には何十年ぶりかの光がさしていた。
- いつの頃からだろう。この場所に雨が降り始めたのは…