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    • 2009/11/13 7:13
    • 東方SS(9)
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    • 「……へへ」

      でも、たった一つだけ。
      たった一つだけ、確実に言えることがある。
      今、この瞬間――。
      もうすぐ終わってしまうかも知れないけれど、この時間だけは。
      彼は確かにわたしの傍にあって。
      わたしを束縛する戒めも、今ばかりは、ないものと思ってもいいだろう。
      今ばかりは、忘れさせてほしい。

      だって、こんなにも幸せを噛みしめられる時間が、次はいつやってくるのか解らないのだから。

      彼の頬に、すっと指を這わせる。
      風で揺れるサラサラの髪を、優しく手で梳いてみる。
      ひっそりと閉じられた瞼に覗く睫毛は、月日の経過を感じさせるほど長く。
      薄く開いた口元は、規則正しく、浅い呼吸を繰り返している。

      「……ちょっとくらいなら……いい、よね……」

      そんな無防備な姿を見て。
      傍らにわたしという女性がありながら、無防備に眠る彼の姿を見て。

      彼に恋焦がれるわたしが、何もしないわけがない。
      彼に恋焦がれるわたしが、何もしないわけがない。

      機会は、今しかないのかも知れないのだから――。

      彼を起こさないよう、そっと彼に顔を近づける。
      お互いの息が触れ合う距離。
      唇と唇が、触れ合う距離。
      少しずつ、少しずつ。
      緩慢な動作で、顔を寄せる。

      部屋にいるのは、わたしと彼だけ――。
      わたしたちを見ているのは、竹の葉と、赤々と輝く日輪だけ――。

      唇と唇が、重なり合う。
      柔らかな感触。彼の吐息が、鼻先をくすぐる。

      「ん……ちゅ…………」

      前髪が、彼の顔にさらりと落ちる。
      胸が張り裂けてしまいそうなほど、心臓が高鳴っている。
      唇で繋がっているせいか、彼の胸の鼓動さえも聞こえそうな気がする。

      わたしの気持ちのありのままを、彼に伝えてしまいたい。
      でも、そうすることは許されない。
      なら、彼が寝ている間だけでもいい。
      わたしはわたしの想いを、唇で彼に伝えよう。

      「んぅ…………大好き、れす……」

      一心不乱に、唇を重ね続ける。
      わたしの本当の気持ちを、彼に刻みつけるように。

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