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    • 2009/11/13 7:11
    • 東方SS(6)
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    • 「ん……?ああ、鈴仙か。来てたなら、声を掛けてくれればいいのに」

      それからどれほど彼の背中を見つめていただろうか。
      ほんの数分ほどの短い時間にも感じられたし、半刻ほど――かなり長い時間のようにも感じられた。
      ほんの些細な衣擦れの音で、ようやくわたしの存在に気づいた彼は、本当に申し訳なさそうに、気づいてやれなかったことを謝
      罪した。……別に気づいてくれなくても良かったのに。

      「それじゃ、早速頼むよ。そこに新聞敷いといたから」

      彼が指し示す方を見ると、確かに畳の上には、数日前の日付が記載された文々。新聞が敷かれていた。
      ……定期購読しているのだろうか。それにしても哀れなり、天狗。



      文机と書架、箪笥と、几帳面にたたまれた布団しか置かれていない簡素な部屋に、鋤鋏の奏でるリズミカルな音が響いている。
      聞こえるのは、彼とわたしの細い息遣いと、時折外から聞こえる、秋風で竹の葉がさざめく風情のある音――。
      誰にも干渉されない、二人だけの静かな時間。
      ずっとこんな時間が続けばいい、なんて思ってしまうのは、やはりいけないことなのだけれど。
      そう願わずにはいられない――そんな素敵な時間。
      ちょっとした沈黙すら心地よく、今というこの時間が、とても愛おしく感じられた。

      自身の立場を弁え、ただの「イナバ」として彼に接しようと思っていたわたしだけれど、そんな時間を共有するうち、少しずつ
      、少しずつ、そういった意識が薄れていくのが、自分でもよく解る。

      「……たまには、こういう静かな時間もいいもんだね」

      突然、彼がそんなことを言う。
      彼の表情が窺がえない今、言葉の真意は解りかねるけど。
      彼がわたしと同じことを考えていたという事実に、わたしは自分の感情を隠すことも忘れ、小さく笑みをこぼす。

      「あ……どこか痒いところ、あったりしませんか?髪が服の中入ったり……」
      「んー……ちょっと背中が痒いかも」
      「ふふっ……解りました」

      そんな他愛ない会話を交えながら、二人の時間は流れていく。
      外では変わらず、竹の葉がサラサラとそよいでいた。

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