黒蛇ヴランさんとモバ友になろう!
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- 2012/5/25 0:34
- L'opera
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- (短編)
甘い甘い砂糖で塗り固めた芳香。
つまらないブッファに添えるあの高音は、きっと…観客の視線に酔った女優の、歓喜の叫びなのだ。
青い目が、狭い舞台を見回した。
古臭い衣装がやけに良く似合う…彼は、1830年風の美男子だった。
長い睫毛の一本一本が似非くさいパリジャンの香りの、上等な美男子だ。それでいて、上背が高く、すらっとしている。
ブルネットの長い髪の毛は女みたいに細くて、鉤鼻はアンシャン・レジームを生きた聖女のようだった………
「さて、これは私の愛犬の話である。」
踵を鳴らす音が、客席にわんと響いた…満足そうな彼は、今日はリゴレットのマントヴァ公爵だった。
世にも有名なアリアは、その貝殻色の唇からしたら、つまらないほど簡単で、ギリシア風の細身でしっかりとした身体からしたら、説得力に満ちたもの…つまり、彼は優秀なテナーであったと言える。
それに、死にいくジルダよりも、絶望するリゴレットよりも、そこにいるマントヴァ公爵はリアルで、美しくて、煽情的だった。
一番大きな拍手を貰うのは常に彼で、一番素晴らしいのも彼だ。
舞台ののち、楽屋の中で、衣装をはずす。
生チョコレートのオペラのような、とろける裸体、鏡の前に晒されるまっさらな彼の肢体は、絵画のように美しかった。
たとえ、その裸体が口紅と歯形で汚れていても、私は怒ったりせずに微笑む。
芸術家は、神の僕でしかないのだから…彼は、逆らえやしない。
「ほら、跪いて、舐めるんだ。」
世界一美しい私の犬は、欧州中を探しても一匹しかいない、まことに高貴な犬なのである。
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皆様お久しぶりでございま~す
いつのまにか髪を切りました↑↑
- (短編)