LIELLEさんとモバ友になろう!
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- 2017/3/14 1:03
- パレット(仮題)
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- 「それでは、選んでください」
黒ぶち眼鏡の青年は、そう言って二つのガラス瓶を差し出した。
「こちらには、ただの水が。こちらには、猛毒が入っています」
最初に右手の瓶、続いて左手の瓶へと視線を移しながら続けると、改めてこちらに向き直った。瓶をテーブルにそっと置くと、一度眼鏡を中指で押し上げる。
「選んだほうを、キミが。選ばれなかったほうを、彼女が飲むことになります」
腕を組み、こちらを見つめる。生きるか死ぬか。その選択を迫られ、冷や汗が一滴、頬を伝う。テーブルに置かれた瓶は何の変鉄もない。片方は見るからにただの水。色はなく、半透明。少し離れているというのもあるが、特別な臭(にお)いはしない。
問題は、もう片方である。触れてもいないのに小さな泡が度々浮かび出て、見るからに毒毒しい紫色をしている。目を凝らせば、これが絵に描いたような毒物であることが分かる。
水を取れば生き残れる。だが、そうしたら……。
ゆっくり振り向く。視線の先には両手で顔を隠すようにして泣きじゃくる少女の姿。もし自分が生き延びる選択をしたら、彼女は死ぬことになる。
そんなことっ!!
紫色の液体が入った瓶をガシッ。と掴むとそれを一気に飲み干した――途端に視界が歪みだす。手から落ちた瓶は床に落ちて割れたようだが、その破裂音は遠く聞こえた。
どさり。床に倒れこむ。身体から力は抜け、意識は徐々になくなっていく。先程まで泣いていた少女がこちらを見下ろし何事か叫んでいるが、最早その声は聞こえてこない。瞼は徐々に重たくなっていき、そして――意識がなくなり、心臓の鼓動が完全に停止した。
出来るなら、授かった命は無駄に散らせたくない。
出来るなら、この一生は平穏無事に過ごしていたい。
そんな在り来たりでありふれた、どこの誰もが思うようなことを胸に抱き生きる。普通で平凡な毎日を過ごせる幸せ。満足感や達成感を得られなくとも不思議と感じる充実感。
出来ることなら、面倒ごとには巻き込まれたくない。けれどもその思いは、たった一つの選択だけで壊れてなくなった。あの日、あいつらと出会ったせいで。
- 「それでは、選んでください」