※*みさき*※さんとモバ友になろう!
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- 2008/12/1 18:50
- 栗鼠
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- 下宿への道を急いでいると、かさかさと落ち葉を絡めながら、栗坊主がひとつ足元に転がってきた。
この辻にも栗の木があったかと見上げると、たしかに上の枝に鈴なりになっている。
毎日歩いているとはいえ、気付かないものである。
日が暮れるといけないのでそのまま足を速めようとすると、またいくつかの栗坊主が転がってきた。
風も出ていないのに不思議なものであるな、と見上げると、木の上に、小さなリスがこちらを見ていた。どうやら、栗をくれるらしい。
「ありがとう」
そのまま何個か転がった栗坊主を、丁寧に指を刺さないように風呂敷に包むと、下宿に持ち帰ることにした。
「沢山の栗」
玄関先で焚火を終えようとしていた大家が、私の風呂敷を見て驚いた。
「木登りでも、なさったんですか」
「リスがくれたのです」
どう言ったものかと迷いながら仕方なく答えたが、ああリスね、なるほど、と大家は優しく微笑んだ。
「せっかくやし、残り火で焼きましょうか」
大家の勧めに従って、栗坊主をむこうとするが、なかなかうまくいかない。
梃子ずっているのを知られらたくなくて後ろを向いたまま悪戦苦闘をしていると、何処からか先ほどのリスがやってきた。
見れば、簡単に栗を取り出していく。
棘があるというのに、両手でしっかりと刺さらぬように押さえて、歯で開いていくのである。
「うまいもんやねえ」
大家が、いつの間にか隣で覗き込んでいた。
「私には取り出せないでいたら、手伝ってくれたのです」
「すっかり、好かれてはる」
ふふ、と軽く大家が笑うと同時に、最後の一粒を取り出したリスは、また どこかへと消えていった。尾がくるりと風が包んで、やさしく揺れるのが幻影のように残る
「こういうことも、あるのですね」
「そりゃあ、栗の鼠て言うやないですか。その木に住んでるんやし、ありますよ」
何ということも無く、大家は答えた。
大家と二人で食べた栗は、香ばしく甘かった。
次に辻を通る時には、礼の品でも置いていこうかと思う。
- 下宿への道を急いでいると、かさかさと落ち葉を絡めながら、栗坊主がひとつ足元に転がってきた。