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    • 2006/10/28 16:04
    • 泥の河
    • コメント(4)
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    • まだ小さい頃、お米をー粒ずつおろしがねの穴に落とし込んだり、手首どころか、肘のあたりまで腕を突っ込んだりして遊ぶのが大好きだった。母はそんな私を見ても、何も言わなかった。
      ある日、いつものようにお米で遊ぶ私に
      「そうやってると、ぬくい(温かい)やろ」
      「冷とうて気持ちええわ」
      「そうかぁ?お米は、あったかいで」
      「お米が?あったかい?お米は冷たいやんか」
      「あんたには、まだわからへんのやなぁ。私はいっつも、あんたがお米に手ぇ入れてんの見て、あったかそうな事してんなぁ、思うてたんやで。
      世の中でー番ぬくいのは、お米やわ」
      けったいなこと(変わった事 変な事)言うなぁ、と当時の私は思っていた。
       
      何年か経ち、宮本 輝氏の『泥の河』を読んで、はっとした。こんなシーンが出てきたからだ。
       
      …調理場の奥でしゃがみ込んでいた銀子が、驚いたように顔をあげた。
      「何してんのん?」
      銀子は恥ずかしそうに笑った。
      「お米、ぬくいんやで」
      そうささやいて、銀子は両手を米の中に埋めた。
      「冬の寒いときでもなあ、お米だけはぬくいねん。
      のぶちゃんも手ェ入れてみィ」
      信雄は言われるままに、手を米櫃に差し入れると肘のへんまで埋めた。少しも温いとは思わなかった。汗ばんでいた手は逆に米粒に冷やされていった。
      「冷たいわ…」
      信雄は手を引き抜いた。両手は真っ白になっていた。
      「うちはぬくいわ」
      銀子は両手を埋めたままじっとしていた。
      「お米がいっぱい詰まってる米櫃に手ェ入れてぬくもってるときが、いちばんしあわせや。…うちのお母ちゃん、そない言うてたわ」「…ふうん」
      母親とはまったく違う二重の丸い目を見つめて、信雄は、近所に住むどの女の子よりも、銀子は美しいと思った。…
       
      切ないシーンだとは思ったが、ただそれだけだった。この本を母は読んだのかな、くらいだった。
      何年かし、ー人暮らしが始まると、遣り繰りが大変で色んな物を切り詰めた。そして、お金のあるなしにかかわらず、お米がたっぷりある時と、半合にも満たない時では、気持ちに随分差があるのに気付いた。
      現在の私は、たくさん残っているお米を見ると、まだ自分にはこんなにたっぷりお米がある、と にっこりできる。元気もふつふつわいてくる。
       
      果たして母が『泥の河』を読んだかどうか。かなり前に死んだため、確かめるすべはない。ただ小説も映画も『泥の河』は大好きな作品のーつになっている。

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