ひさーきさんとモバ友になろう!
日記・サークル・友達・楽しみいっぱい!
-
- 2013/2/26 0:10
- 菊池 寛
-
- コメント(0)
- 閲覧(3)
-
-
- 一、馬券は尚お禅機の如し、容易に悟りがたし、ただ大損をせざるを以て、念とすべし。
一、なるべく大なる配当を獲んとする穴買主義と、配当はともかく勝馬を当んとする本命主義と。
一、堅き本命を取り、不確かなる本命を避け、たしかなる穴を取る。これ名人の域なれども、容易に達しがたし。
一、穴場に三、四枚も札がかかると、もう買うのが嫌になる穴買主義者あり、これもまた馬券買いの邪道なり。
一、穴場の入口の開くや否や、脇目もふらず本命へ殺到する群集あり、本命主義の邪道である。他の馬が売れないのに配当金いずれにありやと聞いて見たくなる。甲馬、乙馬に幾何の投票あるゆえ丙馬を買って、これを獲得せんとするこそ、馬券の本意ならずや。
一、二十四,五円以下の配当の馬を買うほどならば、見ているにしかず。何となれば、世に絶対の本命なるものなければなり。※注1
一、しかれども、実力なき馬の穴となりしことかつてなし。
一、甲馬、乙馬実力比敵し、しかも甲馬は人気九十点、乙馬は人気六十点ならば、絶対に乙を買うべし。
一、実力に人気相当する場合、実力よりも人気の上走る場合、実力よりも人気下走る場合、最後の場合は絶対に買うべきである。
一、その場の人気の沸騰に囚われず、頭を冷徹に保ち、ひそかに馬の実力を思うべし。その場合の人気ほど浮薄なるものなし。
一、「何々がよい」と、一人これを言えば、十人これを口にする。ほんとうは、一人の人気である。しかも、それが十となり百となっている。これが競馬場の人気である。
一、「何々は脚がわるい」と云われし馬の、断然勝ちしことあり、またなるほど脚がわるかったなとうなづかせる場合あり、情報信ずべし、然もまた信ずべからず。
一、甲馬、乙馬人気比敵し、しかも実力比敵し、いずれが勝つか分らず、かかる場合は却って第三人気の大穴を狙うにしかず。
一、大穴は、おあつらいどおりには、あかないものである。天の一方に、突如としてあき、ファンをあっけに取らせるものである。何々が、穴になるだろうと、多くのファンが考えている間は、絶対にならないようなものである。それは、もう穴人気といって、人気の一種である。
- 一、馬券は尚お禅機の如し、容易に悟りがたし、ただ大損をせざるを以て、念とすべし。