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- 2013/6/6 14:10
- 赤いペガサス最終章6
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- 狂乱の日本グランプリから、1週間が経った。
連日、新聞や雑誌のインタビュー、テレビ出演と、超多忙な毎日を送っていたケンであったが、漸く落ち着きを取り戻していた。
ケンが、一番知りたかった事。
カナダグランプリ後の、ユキの行方である。
あの後、セリニアンのぺぺの自宅は空き家となっており、ユキの行方は、要として知れなかった。
ただ一人、ぺぺの親友であるボブのみが、ケンにこう告げた。
今は、そっとしておいてやれ、と。
ユキは、日本に帰国していた。
帰国直後はチームオーナーの日本のオフィスに間借りし、その後はチーフ・メカニックのカサハラの実家に、身を寄せていた。
カサハラの実家は、富士の裾野静岡にある。
たまらず、静岡行きの列車に飛び乗るケン。
カサハラの実家に辿り着くと、ユキは散歩に出ているという。
会ってくれるだろうか?
富士山が良く見える、小高い丘を目指すケン。その先に。
最愛の
妹がいた
マタニティドレス姿のユキ。
ケンは、妹に対峙する。
「ユキ...。」
「おめでとう。兄さん。」
少しだけ、膨らんだユキのお腹を見るケン。
「順調か?」
「うん。」
ユキは優しくお腹を押さえる。
「赤ちゃんは、日本で産もうと思うの。」
「そうか。」
優しい時間が、過ぎてゆく。
「あのな?ユキ。」
「?なに?」
「日本グランプリの前日、ぺぺに会ったよ。」
「!?」
「ぺぺは。真っ赤な瞳でVサインした。直ぐに見えなくなったが、ボクはマシンに駆け寄った。コクピットの中には、これがあった。」
ケンはユキに、ウェディングドレス姿の、ユキの写真を見せる。
「不思議ね?でも、ありそうな話。」
ユキの瞳は、優しげだ。
「やっとわかったんだ。ぺぺの言葉の意味が。『自分の血液型と喧嘩するな』あれは血液じゃなくて、肉親て意味だったんだな。で、あのVサイン。あれは『勝て!』じゃなくて、二人で生きていけ!という。」
「兄さん...」
「子供が産まれたら。ぺぺと、ぺぺの子供と。お前と。みんなで暮らしていこう。一緒に歩いていこう!いつまでも。それが、ぺぺが言いたかった事だと思う。その時が来たら、」
ケンは、深呼吸して言葉を紡ぐ。
- 狂乱の日本グランプリから、1週間が経った。