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- 2015/4/25 11:51
- 桜の下で巡り逢う⑤終幕
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- 【土佐藩~中岡慎太郎】
「…姉さん」
振り向いた姉さんにコツンと額をつける。
「逢えて嬉しかったっス。元気そうで、安心しました」
「…慎ちゃん?」
華奢な身体に触れる度、護らなければと心に誓った大切なひと。
未だ内に響くこの音の中には、やっぱり貴女をおいてはいけないから。
共に在る幸せよりも、貴女の健やかな未来を願う。
「あ…慎ちゃん、また来ね…んっ」
涙を堪えて微笑む姉さんの言葉を遮るように口付ける。縋るように着物を握った小さな手が震えていた。
長い口付けの後そっと身体を離し、右の袂を破いて向こう側が透けるその手に握らせる。
「おれ、姉さんの笑顔が世界で一番好きっス」
にこっと笑顔を見せると、頬を涙で濡らしながら、嬉しそうに笑んで頷いてくれる。
そのまま姉さんは、桜と共に光の中に溶けて消えた。
手に残る、淡い温もりを逃さぬように握り締める。
「慎太?お前、片袖はどうした」
「え…以蔵くん」
瞬きした時には既に見慣れた邸の庭に居て、縁側には訝しげな顔をした以蔵くんが立っていた。
左手で、そっと剥き出しの襦袢に触れる。
「袂は…姉さんに渡したよ」
「…は?おい、お前やはり働き過ぎなんじゃないか」
「やだなぁ、おれは至って健康だよ」
苦笑しながら桜を振り仰ぐ。ひらりと舞い降りる花弁を一片、掌に載せた。
目を閉じれば、鮮やかに浮かび上がる大切なひとの優しい笑顔。
願わくば、眩い光の照らす未来でどうか健やかに、幸せに生きてほしい。
「大好きっスよ、姉さん」
たとえ共に生きることが叶わなくとも、おれの心だけは、貴女の傍に――
~終~
長いことお付き合いいただき、ありがとうございました。
地元の桜は葉の方が目立ってきましたが、まだほんの少しずつ、可愛らしく咲いています。
八重桜なんてふわふわしてて美味しそゴホゴホ
自身の中では、慎太にも小娘にも色々な思いを抱きながら書いていたのですが、あえてその辺りの細かい描写を避けました。
『何か』を感じ取っていただけたら、幸いです。
各所で幕恋企画が持ち上がってますねぇ。
おれもこっそり参加したいな、と思っています。多分。
ありがとうございました!
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