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    • 2015/4/25 11:41
    • 桜の下で巡り逢う④
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    • 【土佐藩~中岡慎太郎】

      しゃくりあげる姉さんの背を撫でながら、ずっと気にしていたことを聞いてみる。

      「…ご家族には、会えましたか?」

      こくこくと、小さな頭が胸で上下した。

      「カナ殿にも?」

      また、小さく上下する感覚に心から安堵する。
      愛しい人に、大切なものをきちんと返せた事実が嬉しかった。

      「…あのね」
      「はい」

      ひとしきり泣いて落ち着いたのか、腕の中から小さな声が聞こえる。
      抱き締めていた手を弛めると、おずおずと泣きはらした顔が上向いた。

      「あの日…慎ちゃんに言われたこと、ひとつだって忘れてない。でも…」

      言葉が途切れ、涙に濡れる瞳が迷うように揺れる。
      ほんの僅かに大人びた姿の、変わらない真っ直ぐな眼におれ自身が映り込む。不安にさせたくなくて、どうにか微笑んでみたものの成功したかは判らない。
      静かに姉さんの言葉を待つと、引き結んだ唇が微かに震える。

      「慎ちゃんを…想わない日はなかったよ」

      やがて絞り出すように紡がれた声は、切なさを孕みながら優しく響いた。
      言いたいことだって山ほどあるだろうに、恨み言などひとつも言わず、ただ変わらずに想い続けていたのだと言ってくれる姉さんがいじらしい。
      おれもですと答えると、ようやく、少しだけ微笑んでくれた。

      「背、伸びたね」
      「…そうっスね。あの頃より、姉さんが可愛らしく見えます」
      「可愛っ?!」

      すぐ頬が赤くなるのも相変わらずらしい。熱くなったであろう頬を、両手で包んで隠す姉さんは本当に愛らしいと思う。
      クスクス笑っていると、優しい時間に似つかわしくない音が耳の奥に響いた。
      聞き慣れてしまった砲撃の音に思わず身体を堅くする。キョトンとして、顔を覗き込んでくる姉さんには届いていないようで、ホッと胸を撫で下ろした。

      「…あ、車の音がする…」

      そう呟いて遠くを見る姉さんの身体がぼんやりと光り出し、暖かな風がふわりと舞い散る桜をさらいながら吹き抜けた。

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