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    • 2015/4/9 12:48
    • 桜の下で巡り逢う③
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    • 地味に続きます。
      読んでくれてありがとう。


      【土佐藩~中岡慎太郎】

      静かだった周囲が俄にざわめき始め、桜の枝が不自然に揺れた。

      「…うわっ?!」

      訝しく思った瞬間、突然吹き荒れた風に堪らず顔を腕で庇う。
      短くなった髪を激しく叩きながら舞い上がる濃紅色の桜吹雪だけは、辛うじて視界の端にとらえることが出来た。
      目も開けられないと感じたのはほんの僅かな間で、徐々に元の柔らかな風へと変化する。ふう、と息を吐きながらゆっくりと腕をおろすと、そこは見知らぬ場所だった。
      さっきまで見えていた景色の代わりに、月も太陽もなく、奥行きの判らない程のただただ濃い群青の空間が広がる。足元も似たようなものだ。背後に立つ桜の根と、ついさっきの風で無数の花弁が緋毛氈のように散っているだけで、他には草花ひとつない。
      頭上からは、淡い光を放ちながら桜がはらはらと舞っていく。そのあまりに幻想的な風景に、暫く見惚れていた。

      「慎ちゃん?」

      音のなかった世界に響く懐かしい声音に驚いて、反射的に振り向いた。
      二間程離れた所で、洋装の女子が呆然とおれを見ている。ほんの少しだけ大人びた顔立ちのその人は、それでも愛しい貴女のままで。

      「…姉さん…」

      同じように、ただ真っ直ぐ見詰めて立ち尽くす。
      どうして、とか。会えて嬉しいとか、そんな事も思い浮かばない。頭が真っ白という表現は、まさにこういう時にこそ相応しい。
      お互い言葉もなく見つめ合っていると、姉さんはおもむろに自身の頬に触れ、思い切りつねった。

      「ちょ、ちょっと姉さん?!何してるんっスか!」

      ギョッとして、ぼんやりと頬をつねっている姉さんに思わず駆け寄る。傍に行っても尚、弛めない手に触れて、ようやく放した。

      「…痛い…」
      「当たり前っスよ!あーあ、赤くなっちゃって…」

      指先で、ほんのり赤くなった頬を撫でる。僅かに熱をもった頬に触れると、思いの外自分の指が冷たい事に気付いた。冷やしがてら、恐る恐る掌で両頬を包むと、ゆっくりと見上げられる。

      「姉さんは…やっぱり眼が離せないっスね」

      視線が再び絡み合ってから苦笑混じりにそう言うと、泣きそうにくしゃりと歪んだ。

      「慎ちゃん」
      「…はい」
      「慎ちゃん…慎ちゃんっ!」

      おれの名を何度も呼びながら、胸に泣いて縋る姉さんの存在を確かめるように、きつく抱き締めた。

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