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    • 2015/4/2 21:46
    • 桜の下で巡り逢う②
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    • 【現代~和姫】

      わたしが自分の時代に帰ってきた――慎ちゃんと別れたあの日以来、初めて京都を訪れた。
      彼の言葉を胸に抱いて過ごした日々は、決して悲しいことばかりではないけれど。
      折に触れ、彼が傍に居たらどれほど幸せだろうかと、思わずには居られなかった。

      「あの頃居たのは…この辺りかな?」

      地図を片手に、桜の咲き乱れる街を歩く。すっかり淡いピンク色に染まった京都は、時々吹く風に花びらが綺麗に舞い、暖かな春を喜んでいるみたいに見える。

      勿論、景色は幕末のそれとは大きく違っていて、同じ場所を歩いていたとしても、わたしには『同じ』だと断言出来ない。

      「仕方ないか…裏道ばっかりで、あんまり表通りとか歩かなかったもんね」

      以蔵に、大きな声で名を呼ぶなと叱られた事や、みんなの変名を説明してくれた慎ちゃんを思い出し、ひとり笑みを零しながら進むと、一本の桜の木が目に留まった。
      さして風も強くないのに、さわさわと枝を揺らして花を散らすその桜は満開で、とても綺麗だ。

      吸い寄せられるように近付いていくと、横から来た自転車とぶつかりそうになる。
      慌てて避け、案の定バランスを崩して転びそうになった時、幹に手が届いた。
      スピードを上げて走り去る自転車を見送って、幹に寄りかかりながら溜め息を吐く。
      こんな時にも、思い出すのは慎ちゃんばかり。
      二人で行ったお遣いの帰り道、転びそうになったわたしを支えて『姉さんは目が離せないっスね』と苦笑して、普段は繋いでくれない手をそっととってくれた。
      寄り道してこっそり桜を見せてくれた時、来年も一緒に見ようと交わした約束は果たせないまま、あれから瞬く間に百年以上が過ぎ去った。

      「…慎ちゃん」

      顔を上げ、下から仰ぐ桜はとても綺麗で、涙が零れそうになる。
      唇を結んで堪えようとした瞬間、ふわりと暖かい風が吹き、花びらが沢山舞い上がった。

      ――姉さん

      風音に溶けて消えそうなほど微かな声が、けれどはっきり、耳の奥に静かに響く。
      ついさっきまで視界に映っていたビルや車の影はなく、ただ、桜の花びらだけが見えた。

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