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- 2012/12/28 0:05
- ある夏の純情~7~
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『リンク:~6~』
「ただいまー」
「おかえり。ってあんた、こんな時間までどこ行ってたの、帰宅部のくせに」
時計を見ると、もう7時になっている。確かに、帰宅部で帰りの早い俺にしては遅い。日が長いから気がつかなかった。
「え? あぁ、純夏とちょっと寄り道。ていうか、息子に向かって『帰宅部のくせに』はないだろ」
「あ、そう。じゃあいいわ。お風呂入ってきちゃって」
母さんがあんまりあっさり納得したので拍子抜けした。
「あ、うん」
純夏と寄り道なんて、いつものことではない。珍しいことなのに、母さんはまるで、「それなら納得だ」とでも言う風に軽く頷いた。
「ま、別に良いか……。やべ、メールすんの忘れてた」
と、そのときは映画の約束を断るメールに気を取られ、あまり気にしなかった。純夏の妙な行動も、母さんのおかしな態度も。まして、数日後、もっと変なことに巻き込まれるなんて思ってもみなかった。
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「は? 純夏ごめん、もう1回言って?」
「だから、1週間だけ私の恋人になってって言ってるの。2回も言わせないで」
純夏の頭はおかしくなったんだろうか。ゲーセンの次は、「恋人になって」と来た。
「純夏、変な物でも食べたのか? それともどこかに頭打った?」
「失礼ね。私の頭はいつでも正常よ、登なんかより」
「なっ……!?」
今日の純夏はなんだか機嫌がいい。だけどその分、毒舌が冴えわたっている。
「別に良いでしょ? どうせ暇なんだから」
「俺にだって予定ってもんがあるんだよ!!」
「何? 言ってみなさいよ」
「ぐっ……」
図星すぎて何も言い返せない。「予定」なんて言ってみたものの、はっきり言ってなんの予定もない。もうすぐ夏休みだというのに、なんて悲しい。
「じゃあ決まりね。今日からよろしく、“彼氏”さん」
「は!? 待てよ!!」
去って行こうとする純夏を俺は引き止める。
「まだ何か? 予定があったって“お友達”の誘いは受けるのに、“幼なじみ”の誘いは受けないって言うの?」
また図星をつかれ、俺は黙ってしまう。
「決まりね」
純夏はフッと悪い笑みを一瞬浮かべ、上機嫌に歩き去った。『リンク:~8~』