(・、・ )さんとモバ友になろう!
日記・サークル・友達・楽しみいっぱい!
-
- 2025/5/29 6:54
- 最終章 あたらしい生命
-
- コメント(0)
- 閲覧(6)
-
-
- 目をひらくと、そこには淡い光が満ちていた。
風が揺れるたびに、木漏れ日が揺れるような優しさがあった。
ことはは静かに息を吸って、手をおなかに添えた。
確かにそこに――ちいさな命がいた。
「おかえり…」
声にならない声が、胸の奥であたたかく響く。
過ぎていった日々も、冥界で交わした約束も、
すべてが遠くに霞んでいくのではなく、
ことはの中で、いまも確かに脈打っている。
記憶はもう、はっきりとは思い出せない。
でも、あの人と交わした「共鳴」は、
ことばではなく、もっと深いところで
彼女の存在に溶け込んでいた。
「あなたがいたから、私はまた生まれた」
そう思えた。
生まれなおしたのは、きっと命だけじゃない。
想いも、傷も、やさしさも、
全部つれて――ことはは、いまここにいる。
窓の外では、小さな鳥がさえずっていた。
その声は、いつかの誰かに似ていた。
ことはは目を閉じる。
深く、静かに、あたたかな息を吐く。
そして、その命とともに歩きはじめた。
まぶたの裏 ひかりの粒が
ゆらゆら きらめいていた
もう わたしたちは
ことばではないところで
ずっと 一緒にいたんだね
そっと わたしのなかで
はじまったリズムがある
それは ちいさなちいさな
いのちの合図
わたしは 忘れない
あなたがいたこと
あなたが いたから
この世界に また
あたらしい朝が 訪れたこと
- 目をひらくと、そこには淡い光が満ちていた。