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- 2025/5/29 6:51
- 第四章 午後のまどろみ
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- ふたりで昼寝をしたのは、どれくらいぶりだっただろう。
ことはは、淡く差し込む光の中でひかるの肩にもたれていた。
窓の外では、風が庭の葉を揺らしている。時間が止まったような、やわらかな午後。
「……ねぇ、ひかる」
「ん」
「夢って、ふしぎだね。わたしたち、よく似た夢を見てる気がする」
ひかるは目を閉じたまま、笑った。
ことはの声は、深く静かに、自分の奥へ染みこんでくる。
「重なってるのかも、少しずつ。心の奥が」
「うん。眠ってるとき、いちばんそばにいる気がする」
ことはの言葉は、雫のようだった。
ぽとり、ぽとりと胸の中に落ちて、やがて広がっていく。
ふたりで過ごす時間は、以前よりも静かになった。
多くを語らなくても、お互いの呼吸の数で、いまの気持ちがわかる。
この午後のぬくもりが、どこかへ連れていく気がした。
まるで、目には見えない道を通って、
ふたりだけの深い場所へ――。
「ことは」
「……なに?」
「夢のなかで、何を見た?」
「光。たくさんの光が、わたしの中で泳いでた」
「それ、たぶん、ぼくも見た」
ふたりのまどろみは、まるで胎動のようなやさしいうねりを生んだ。
何かが始まる予感がして、けれどまだ、名前のない感覚だった。
眠りの底で きみの音を聞いた
やわらかな鼓動 とけあう呼吸
夢の途中で 光が笑って
まだ知らない未来を ふたりに見せた
心の奥の ふかい井戸に
水が満ちるように しずかにひろがる
わたしとあなたを なぞる記憶
この手がふれた 最初のやさしさ
目を閉じても ほどけない
この午後は 祈りのようで
ふたりのまどろみは
新しい鼓動を 抱いていた
- ふたりで昼寝をしたのは、どれくらいぶりだっただろう。