(・、・ )さんとモバ友になろう!

日記・サークル・友達・楽しみいっぱい!

Yahoo! JAPAN IDだけで遊べる!今すぐ遊ぶ!

    • 2025/5/26 9:17
    • 最終章 別バージョン
    • コメント(0)
    • 閲覧(3)
  • "アバター"
    • 最終章 別バージョン
      「記憶という名前の光」

      その日は、不思議なほど風のない朝だった。
      中庭の花も、葉も、音をたてずにじっとしていた。
      そんな静けさの中で、ことはは白い小箱を両手で包み込むように持っていた。

      それは「記憶のメモリ」と呼ばれる、新しい技術だった。
      過去の断片を、かすかな脳の波形から呼び戻し、
      記憶の回路を繋ぎ直すことができるという。

      ただし、それは選べない。
      なにを思い出すかは、ことはの心が決めるのだという。


      静かに横たわった彼女のこめかみに、メモリはそっと触れる。
      瞬間、目の奥に小さな光がともる。
      遠くで笑い声がした気がした。
      ――子供たちの声。
      光葉、ひまり、星奈。
      名前が、音として胸に届く。


      「……あれ、わたし……どうして……涙が」

      涙の意味がわからなかった。
      でも、その涙には、確かに「知ってる」があった。


      その夜、ひかるが病室に入ると、ことはが起きていた。
      彼女はぼんやりと窓を見ていたが、ひかるに気づくと、ゆっくり振り返った。

      「……ねえ、ひかるくん」
      「うん」
      「――光葉が、お花を摘んでた夢を見たの。ひまりは走ってて、星奈は…空見てた」
      「……ことは」
      「ねぇ、あのこたち、わたしの……子供だった、よね?」

       
      涙ではなく、確信に似た微笑みがそこにあった。

       
      すべてを取り戻したわけじゃない。
      けれど、確かな光が心に灯っていた。
      記憶のメモリが運んできたのは、ただの記録じゃない。
      ことはの「生きてきた日々」そのものだった。


      「わたし、忘れてたのね」
      「でも、今は覚えてる」
      「それだけで……もう、十分だね」


      そして彼女は、ひかるの手を握った。
      その温度が、確かに過去と未来を繋いでいた。


      ――静かに、記憶が戻った部屋に、
      風がまた優しく吹き始めていた。

コメント一覧

更新する

この日記を違反通報する

(・、・ )さんの
最新日記

(・、・ )さんの
お友達の最新日記

日記を探す

気になるキーワードで検索

みんなの新着日記