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- 2025/5/26 3:21
- 第五章 ふたりの風景
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- ひかりが射していた。
差し込む場所は狭くて、でも――あたたかかった。
となりに、誰かがいた。
言葉はなかったけれど、そこに“音”があった。
たとえば、深く息を吸う音。
小さく笑う音。
何かをこらえるように、喉が鳴る音。
それがすべて、心地よかった。
* * *
「またね」
そう言われた気がした。
でもその背中を、ことはは引き止めなかった。
その人の時間がどこに流れていくのか、
ことはにはわかっていた。
だから――
「また、ここで会おうね」
笑って、そう言った。
わかれじゃない、約束。
たとえ、名前も、姿も忘れてしまっても。
* * *
そして今、ことはは一人だった。
けれど、それは「孤独」ではなかった。
風景は変わらずそこにある。
ふたりで見た景色は、胸の奥に残っていた。
歩いた道、交わした言葉、手のぬくもり。
名前のない想いが、静かに胸に降り積もる。
だから、きっと大丈夫。
どんなに長い夜でも、朝はちゃんとやってくる。
そう信じられるだけの記憶が――ことはの中に、あった。
- ひかりが射していた。