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    • 2025/5/26 3:14
    • 第三章 とざされた扉
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    • 遠くで、小さな音がした。
      鈴のような、ひび割れた鐘のような――
      どこか懐かしくて、哀しい音。

      ことはは、足を止めた。

      目の前には、ぽつんと扉があった。
      色のない空間に、ぽつんと。
      まるで、ずっと前からそこにあったように
      自然にたたずんでいた。

      触れた指先に、冷たい金属の感触。
      でも、開かない。

      「……ここ、知ってる気がする」

      言葉にすると、胸の奥がきゅっと痛んだ。
      思い出しかけた何かが、
      まるで拒むように引き戻されていく。

      それでも、扉の奥から
      誰かの声が聞こえた気がした。

      ことは――

      名前を呼ぶような気配。
      でも、それもすぐ霧に吸いこまれてしまう。

      「開けて、ください……」

      願うようにつぶやいても、扉は静かなまま。
      ただ、ことはの胸に
      ぽつりとしずくのような悲しみが落ちた。

      ひとつだけ確かだったのは、
      この扉の向こうに、
      とてもたいせつな“なにか”があるということ。

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