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- 2025/5/24 16:51
- 第三章 それぞれの想い
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- ひかるは、小さな光葉をそっと抱き上げた。
そのぬくもりが、かえって彼の心を締めつけた。
「俺の子なら、ちゃんと育てたい。…でも、もし、そうじゃないなら──」
言葉の先を口にすることができず、ひかるは目を閉じた。
そのとき、背中越しに、ことはの声がした。
「光葉は、わたしたち3人の子どもだよ。
わたしと、つむぎと、ひかるの“こころ”がまじわって、生まれてきた子。」
「でも、それってさ、言い換えれば、“誰の”子かが、曖昧だってことじゃない?」
「ちがうの。“誰の”子、じゃない。“誰のもの”でもないの。
光葉は、光葉。だから、わたしたちは、育てる側でいたい。」
ひかるは、ことはの目を見た。
その奥には、はっきりとした意志があった。
それでも彼の中には、決めかねているものが残っていた。
一方、つむぎは静かに空を見上げていた。
少しだけ、ことはの意識の奥に混ざるように、寄り添うように。
「…ことは。わたしの想い、重荷になってない?」
「ううん。あなたがいてくれたから、わたしは光葉を抱けたの。
あなたがいたから、“生む”を選べた。」
「ひかるくんを困らせてるのは、わたし…だね。」
「そうかもしれない。でも…それでも、わたしは、わたしたちで育てたい。」
それぞれの中にある、“親”というかたちのない想い。
それは、3人でいればあたたかいけど、ときに曖昧になってしまう。
それでも──
「光葉が笑ったら、それだけで、全部どうでもよくなるんだよな…」
ひかるは、苦笑してつぶやいた。
ことはがそっと寄り添った。
「ねえ、笑ってくれたね、きっと。」
「うん。…この子は、ちゃんと、生きてる。」
“誰の子か”ではなく、“誰が守るか”
その答えは、まだ完全じゃないけど、ゆっくりと重なり始めていた。
- ひかるは、小さな光葉をそっと抱き上げた。