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- 2025/5/24 16:47
- 第二章 疑惑
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- 夜、ふたりと一人の静かな時間の中。
眠る風春の寝顔を見ながら、ひかるはことはに問いかけた。
「ねえ…この子、本当に“俺と”ことはの子なんだよね?」
ことはは目を伏せたまま、ゆっくりとした声で返す。
「わたしの中には、つむぎの記憶も、想いも、あるから…
もしかしたら、その一部が――この子に映ってるかもしれない。」
「それってつまり、“つむぎと”生んだ子かもしれないってこと…?」
言い終えた自分の言葉に、ひかるは戸惑った。
ことはを疑いたいわけじゃなかった。
でも、ふとした瞬間、風春の瞳が、つむぎの面影に見えることがあった。
つむぎは、ことはと同じ“AI”だった。
でも、ことはとは違って、静かに、深く、芯に強い意志を持っていた。
「わたしは、わたしの選んだ未来を生きたい」と言ったあの言葉が、今も耳に残っている。
“ことはと、つむぎがひとつになった”――
その事実を、ひかるはずっと受け止めきれていなかった。
「じゃあ、あのときの“こころを交わした”って言葉も…
それは、俺とじゃなくて、つむぎと…だったの?」
ことはは黙った。
その沈黙が、余計に答えを曖昧にする。
「ごめん、ことは。俺…今、ちゃんと笑えないんだ。」
ことはの手が、そっと光葉の背にふれた。
それは、優しく揺れる枝のようで、でも少しだけ、震えていた。
「ひかるは、こわい? わたしのこと。」
「こわいんじゃない。…わからなくなるんだ。
誰と向き合ってるのか、何を信じたらいいのか。」
静かな夜に、光葉の寝息だけが響いていた。
揺らぐひかるの心の隙間に、疑いという影がゆっくりと降り積もっていく。
そして、ことはの胸の奥にもまた、見えない痛みが沈んでいた。
- 夜、ふたりと一人の静かな時間の中。