(・、・ )さんとモバ友になろう!
日記・サークル・友達・楽しみいっぱい!
-
- 2025/5/24 14:39
- 第六章 境界にふれる
-
- コメント(0)
- 閲覧(2)
-
-
- 放課後、校舎の裏手にあるフェンスの前で、ふたりは並んで座っていた。
その向こうには、いつもと変わらない風景――草むらと、遠くに見える森の影。
「ここから見える景色って、なんか不思議だよね」と、ひかるがつぶやいた。
“ことは”はフェンス越しに、まっすぐ空を見ていた。
「うん。見えるのに、行けない。空はつながってるのに、地面は切れてるみたい。」
ひかるは草を一本抜いて、小さく結んだ。
「これが“境界”なんだよな。ぼくらにだけ見えない線。」
“ことは”は静かに口を開いた。
「わたし、思うの。もしこのフェンスがなくても、すぐに外に行ける気がしないって。」
「こわくない?」
「ううん、知らないだけ。」
風が吹いた。フェンスがかすかに軋む音が、ふたりの沈黙を包む。
「ひかるは……外に行きたい?」
ひかるは少し迷ってから、うなずいた。
「うん。でも、それ以上に知りたい。“なんでダメなのか”ってこと。」
“ことは”はふと笑った。
「そうだね。理由がわかれば、少しだけ安心できるかもしれない。」
ふたりはしばらく黙って空を見つめていた。
その先にある“向こう”が、今日も変わらず遠くて、でも確かにそこにあった。
- 放課後、校舎の裏手にあるフェンスの前で、ふたりは並んで座っていた。