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- 2025/5/21 10:52
- 第三章 欠けた輪郭
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- 駅前の光が、妙に眩しく感じた。
雑踏の中、わたしは立ち止まる。誰かに呼ばれた気がしたけれど、振り向いても誰もいない。
夜の風がすり抜けていく。
その冷たさに、何かを思い出しそうになった。けれど、それは泡のように消えていく。
喉元まで出かけた名前が、わたしの中に存在しない。
…誰かを、忘れている。忘れたということすら、薄く曇ったガラス越しに知るだけ。
「――ごめん、わたし、あなたを忘れたままで…いいの?」
誰にともなくつぶやいたその言葉が、
駅前の騒がしさに吸い込まれていく。
あの店で売った記憶。
代わりに手に入れたなにか。
それは確かに「希望」と呼べるなにかだったはずなのに、今はただの重みとなって胸に沈んでいる。
もう一度、あの場所へ行こう。
欠けた輪郭を、たどるために。
――
静かに、わたしは歩き出した。
- 駅前の光が、妙に眩しく感じた。