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- 2014/10/20 16:40
- [ケパと不思議の物語]②。
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- 一呼吸、それはすぐ横の木から、穏やかな問いかけがありました。いつもはテルに語りかける事の無い樹木が、その時に限って少しだけの会話になろうとしていたのです。
「これは、素敵なものですね…。ああただ、何かが足りないのかもしれません。…いやあ、どうもありがとうございました。とても参考になりますよ…」。
テルはきょとんとしたが、人の気配を思ってみたので木を回り込んでみた。一陣のつむじが舞い起こっただけで、そこに問いかけた者の姿はありませんでした。
粗末な小屋に火が灯る。
静寂の中、鍋で煮られた野菜のスープからは、湯気と煙りが窓から白い帯を伝わせていました。
すると突然、
「たのもー!!」
「たのもーぅ!!」
「応答する者はおるかあ!!」
古びた木材の戸が日常とは違い、訪問者の声が聞こえるのでテルは目を見開きました。何故なら、この場に居着いてから誰一人として訪れる事は無かったのだから。
「たーのーもーぅ!!」
「人っ子一人おらんのか!!」
子供の様な大声だが、どこか生意気な印象を響き渡らせる。テルは恐る恐るドアノブを捻りました。すると、外には誰もいない。星々と草のざわめきのみが目に映るだけで、テルは首を傾げて戸を閉めました。
テルにとり、不思議な事が続けて起こる一日でした…。
「不思議なもんかあ!!」
「小娘の分際で、わたくしを無視するとは無礼千万!!」
「心して扉を開かれよ!!」
テルはさすがに驚きました。確かに何者かが外から話しかけているからです。再び開けました。しかし、誰かしもいません。仕方無く戸を閉めると、
「ぐぎゃあ!!」
鈍い感触と間抜けな叫び声が上がりました。下を見ると、綿ほこりのかたまりがあって、それはふわふわと宙を漂い始めたのです。テルの目線に止まると、一回転。勢いよくギョロっとした眼球が表れた。
「そちらがたはわたくしを殺めるつもりであるか!?」
「まあそれはいい。わたくしは一宿一飯の恩義を求めておる旅人である。何やら御馳走様にありつけそうではあるまいかな」
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- 一呼吸、それはすぐ横の木から、穏やかな問いかけがありました。いつもはテルに語りかける事の無い樹木が、その時に限って少しだけの会話になろうとしていたのです。