日記・サークル・友達・楽しみいっぱい!
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- 2017/5/9 5:42
- ひまわり
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- それは井戸の底の蛙。
蛙は毎日空を見上げていた。
薄暗い井戸の底からまんまるに切り取られた光輝く空を…
羨まし気に憎々し気に、見上げていた。
変わらぬ世界から日々移り変わる世界を、眩しそうに睨む様に流れる雲や自由に飛び回る鳥達を見上げていた。
ある日空から何かが降ってきた。
それは一粒の種であった。
きっと飛んでいた鳥が落としたのだろう。
蛙にはその種に見覚えがあった。
蛙がまだ外にいた時に、真夏の空に向かって誇らしく咲く花…それは向日葵の種であった。
変わる事の無かった蛙の世界に、ひとつの変化…宝物が出来た。
蛙はその種を大事に、大事に見守り続けた。
(何時咲くかな?今日かな?明日かな?もうちょっと先かな?)
変わらなかった蛙の日々に楽しみが出来た。
だがまだ知らなかった。日もろくに当たらない濁った井戸の底で花など咲く筈もなく、何れその種は腐り悪臭を放つだろう。
蛙は見守り続けた。
腐り行く種を、
大事に、大事に、大事に、
だいじに…
- それは井戸の底の蛙。