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- 2007/6/29 10:07
- 水曜日のクルト【8】
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- ポーイッ!!
僕は投げられるパイプを受け取ろうと腕を伸ばして待っていた。
しかし、クルトは僕の方ではなく全く逆の方に投げたんだ!
『あぁ~!どうしてそんなことをするんだ!やっと君を好きになったのに!』
『ひひっ!さぁ、あっちの方へいくんだよ?歩けば早く降りられるから。じゃぁね!』
クルトはそう言うと、すぅ~…っと消えていった。
『どうしてなんだ、クルト…。』
僕は悲しかったが、今はそれどころではなかった。このまま凍えて死んでしまう。
『とにかく歩こう…でもどの方向に?クルトはあっちと言っていたが…。』
方向がわからなくて当然だ。ここは雲の中。右も左も前も後ろも上も下も全部真っ白だからだ。
『どうしよ~…。どこに行けばいいのかわからないよ…。』
僕の意識は寒さのあまりに次第に薄れていく。その時だった。
『っ!なんだっ?あれは!?』
遠くの方に小さく赤いものがぼんやりと見えた。
『あれを目印に進もうっ!何もしないよりはましだからね!』
僕は小さくて赤いものに向かって歩き出した。
赤いものに近付いて行くと、それに比例して僕の意識も遠のいていく。それでも、近付くと少しづつ暖かくなるのが唯一の救いだった。そしてついに赤く光るものに触れることが出来た!
しかし、触れた瞬間、僕の意識は途切れたっ!
次に僕が目を開けるとそこは何やら見覚えのあるところに立っていた。
描きかけのキャンパス、白いレースのカーテン、窓の外の景色。全てに見覚えがある…。
そう、ここは僕の家だったんだ。
『帰って来れたのか。』
僕は胸を撫で下ろした。
『しかし、なんで僕の家に?いや、それともあれは夢だったのか?』
そう考えていると、かいだ覚えのある匂いが僕の鼻を刺激した。
匂いの元を辿って行くと、机の上にパイプが転がっていた。
『あっ!僕のパイプだっ!』
そのパイプはついさっきまで火が燈っていたかのように暖かい。
そして僕ははっとした。
『そうか。わかったよ、クルト。なぜ君がパイプを僕とは違う方向に投げなくてはいけなかったのか。そしてあの雲の中で見た赤いものの正体がなんだったのかもね。クルト、ありがとう!』
僕はこの体験を本にすることにした。もちろん、職業である絵も使った、絵本にね。クルトもどこかで読んでくれるかな?
[終わり]
- ポーイッ!!