カムイさんとモバ友になろう!
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- 2011/6/12 10:28
- 決心。そして別れ
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- 一緒になって数十年経つ。
我慢しなくてはならないことが多くなったのはいつから、とは明確には思い出せない。
いつも気にかけていなくてはならないことだとは、充分承知していた。
今考えれば、あちらからはシグナルを発してくれていた。
しかし、社会である程度の責任を持たされたオレは、やり甲斐と忙しさにかまけ、あえてそのシグナルを無視し続けた。
だが、ついに限度を越えてしまった。
オレは意を決して「なんとかならないの?」と問う。
彼女はオレの目を真っすぐに見ながら、「仕方ないけど」と結構サバサバした言い方で返す。
一縷の期待がないわけでは無かったが、そう言われてしまえば諦めるしかない。
たくさんの思い出が蘇るのと比例して、後悔の念が膨らむ。
何故もっと早くキチンと向かいあえなかったのだろう。こんな最悪の状況にならずに済む方法はたくさんあったはずだ、と悔やむ。
諦めきれないが、引導を渡されたのだから仕方がない。
オレの迷いを入れる隙を与えないよう、彼女は手際よく事を進めた。
そして「これ…」と言ってオレに差し出した。
そこには、ふたつに割れた歯が銀色の無機質なトレーに載せられていた。
「よくこんなになるまで我慢しましたね。下手したら大変なことになりましたよ」
マスクで顔全体を見たことはないが、彼女のパッチリ二重の可愛らしい目が笑う。
さらば、オレの歯。
生まれて初めて「スタメン」の歯と別れた日をオレは決して忘れはしない。
- 一緒になって数十年経つ。